Photo by KORG
KORG は Paシリーズというアレンジャーキーボードを販売していますが、今回紹介するのは、そのPaシリーズのアレンジ機能を継承した「HAVIAN 30」という88Keyキーボードです。
私はPaシリーズのPa900を持っていますが、 このキーボードの利便性は何と言ってもスピーカー付きでハイクオリティなサウンドを弾けるという部分ですね。
HAVIAN 30 ではそれが電子ピアノのタッチで実現できるということなので、ピアノも弾きたい、アレンジもしたい、即興演奏、アドリブの練習をしたい、作曲や編曲のアイデアを得たい、こんな欲張りな方へピッタリのキーボードと言えます。
目次
アレンジャーキーボードとは?
日本では馴染みが薄いアレンジャーキーボード。
キーボード奏者、作曲編曲がしたい方へオススメな独特な存在ですが、その多様性から、様々な音楽制作への応用が可能となっています。
アレンジャーキーボードの可能性や利便性は、やはり使い手次第と言えます。
その筆頭であるKORG のPaシリーズについて詳しく書いてますので、こちらの記事を参照していただければ幸いです。
HAVIAN 30とは
冒頭でも少し触れましたが、「HAVIAN 30」は一言で表現するならば、Paシリーズの電子ピアノバージョン、と言ってしまって差し支えないと思います。
詳しくは Paシリーズを紹介 で確認していただけると幸いですが、要は電子ピアノのタッチ、パフォーマンスでアレンジャーキーボードの利便性を欲したい、という方に最適な機種となっています。
タッチ
HAVIAN 30は最近の KORG では馴染みのない「ヨーロッパ製ハンマーアクション」というピアノタッチを採用しています。
キーボードのタッチに詳しい人は FATAR製 と言えばイメージがわくと思いますが、重すぎないタッチはピアノ以外の音色を弾くときにも良いと思います。
KORG の電子ピアノは通常 RH3 というピアノタッチが採用されているのですが、それとはまた一味違うタッチですね。
インタフェース
インタフェースはPaシリーズからボタンの数を極力少なくしていますね。
Pa900はボタンが多いのですが、ダイレクトに押せるのが便利な反面、位置を覚えないと煩雑になります。後継機種のPa600は少し整理されましたが、HAVIAN 30 でも自動演奏であるスタイルが、画面を押して選択するような仕様に変わっています。
音源
音源についてですが、基本的にはPaシリーズの EDS音源 ですので、巷の電子ピアノに入っているものと比べるとハイクオリティなサウンドです。
ただ、今の最前線のシンセサイザーに採用されているものと比べると、さすがに一世代前なのはぬぐえません (正直十分だと思いますけどね・・・)
この機種を候補に上げる人にとって重要なことは、リアルですごい音、ではなく「アンサンブルに馴染む音」であることです。
アンサンブルデジタルピアノ、アレンジャーキーボードは、アンサンブルのバランス感覚を養う、という面でも利便性が高く、それは演奏面だけでなく編曲視点においても必要な感覚です。
よく音源の良し悪しだけで製品の性能を評価する人がいますが、私は「何を求めるか」でそれは変わると思っています。
単にリアリティを追求するならば、今ではPCのソフトシンセ、となってしまいますし、ハードウェアそのものを選ぶ基準というのは、ライブ演奏、創作、作曲編曲、アイデアの源とする、それによって変わってきます。
単体で聴いてリアリティな音、ではなく「アンサンブルに馴染む音」という面で考えると、EDS音源でも十分であり、逆に音は求め始めたらキリのない話ではあります。
スタイル/アレンジ機能を使う上で重要なのは、曲というものがどのような要素で構成されているか、を知ることであり、また、それらを作り出すのに重要なのは音質そのものではなく、各楽器をどのように鳴らすか、弾くか、です。
それらを考慮すれば、もはや必要にして十分なサウンドと言えるでしょう。
デザイン
デザインがやはりオシャレですね。
ちょっとモダンな感じで部屋に溶け込みますし、グラフィカルなディスプレイの存在、アーバンなブラウンカラーがシックな感じで落ち着いています。
電子ピアノとはまた違った独特な雰囲気ですね。
専用スタンドは見た目がスタイリッシュで一体感はありますが、持ち運びをする可能性がある人は通常のキーボードスタンドでも良いと思います。
スピーカー
Paシリーズよりもアンプ出力が高いので、音が鳴らせる環境であればその真価を発揮できると思います。
やはり電子ピアノベースな部分もありますので、シンセのPaシリーズの出音とはタッチも含めるとまた一味違った感じです。
マルチに使いこなす人に最適
HAVIAN 30 はスピーカーも内蔵されていますが、この「すぐに弾ける」というメリットを持ちつつも、通常の電子ピアノには無いアレンジ機能を備えていることが特徴です。
この価格帯の通常の電子ピアノと比べればややタッチ、ピアノ音源面で劣る面もありますが、それらの機種は鍵盤の材質やピアノ音源そのものへ注力、投資していますので当然と言えば当然です。
しかし様々な音楽ジャンルに対応する、または創造する、そのような目的であれば、色々なことが出来るこのシリーズは総合的な面でその差は圧倒的でしょう。
とにかくピアノ演奏だけではなく、マルチに使いこなしたい! という方へ最大のパフォーマンスが期待できます。
逆に言えば、ピアノだけ弾きたい、最新のシンセサイザーの音を求めたい、それならば、それに特化したステージピアノを選ぶべきです。
HAVIAN 30を選ぶ理由
HAVIAN 30 はアレンジャーキーボードですが、電子ピアノのタッチ、音域を備えていることからもPaシリーズとは少し別の立ち位置になると思います。
つまり「機能性の比率」を考慮して選択することで、コストパフォーマンスの充実を図れると思います。
分かりやすく言えば、何を重視しつつ多機能の価値を自分の中に落とし込むか、です。
私なら、やはりわざわざピアノタッチ、88keyというのは HAVIAN 30 を選ぶ軸となる部分になると思いますので、そこから考えてみます。
こんな人にオススメ
- まず基本的に「電子ピアノとしても使いたい」という人
- シンセサイザーに内蔵されているハイクオリティな音源も欲しい人
- 作曲をしたいが、一から作れないので色々なジャンルの音楽のベースサウンドを知りたい、または体感したい
- ピアノタッチで様々なジャンルの音楽をバックにアドリブ、即興演奏の練習をしたい
- 将来的には、PCと連携させて作曲のアイデアとなるベースサウンドを使いたい
- 持ち運びが出来るスピーカー付きの電子キーボード、という価値が分かる人
- Pa600やPa900はシンセタッチだったから、ピアノタッチでPaの機能が使いたい、という人
- 人が持ってない個性派の製品を求める人
買わないほうが良い人
- 当然ですが、ピアノタッチなので、シンセタッチで弾きたい人
- ピアノを弾く頻度が低い
- ピアノタッチで他の音色を弾くのは苦手、あまり好きでない
- そこまでアレンジャー機能を使わないかもしれない、という人
- 最新のピアノやシンセ、どちらかに特化したものを選択したい人
- スピーカー付き、ということに利便性を感じない人
- ピッチベンダーが独特なので、それが気になる人(細かい)
マニュアル動画が充実している
このシリーズの特徴として、やはりチュートリアルが充実していることです。
ビデオマニュアル HAVIAN 30 - DIGITAL ENSEMBLE PIANO | KORG (Japan)
キーボーディストや作曲編曲をしている人にとって、やはり慣れの面で直感的に操作できるとは思いますが、アレンジャーキーボードを試してみたい、導入してみたい、そう思っている方には少し敷居が高くなりがちです。
各機能の操作方法を紹介した動画が充実しているので、この手のキーボードが初めての方へもオススメです。
海外の需要が強いアレンジャーキーボードですが、日本語でチュートリアルが視聴できるのは嬉しいですね。
デモ動画
こちらは Kraft Music のパフォーマンス動画。
ピアノ弾きはもちろん、様々な音色を扱うキーボード奏者にもおすすめですね。
色々な動画が上がっていますが、この動画はサウンドが参考になると思います。
ピアノ重視な人にとっても相当なものを求めない限り本当に十分なサウンドです。やはり弾き手自身の感性、テクニックが重要。
最後に
簡単ですが、HAVIAN 30 の紹介でした。
アンサンブルデジタルピアノ、という位置付けである HAVIAN 30 ですが、ピアノタッチのアレンジャーキーボード、でいいと思います。
主にポップスやジャズ思考、そして作曲編曲に興味がある人で一台マルチに使える電子ピアノが欲しい、と考えている人に最適だと思います。
逆にクラシックピアノのような性能を求める人は、素直にピアノだけに特化した電子ピアノを選んだ方がいいですね。
アレンジャー機能を活かすには「コードが弾けること」が前提になってきますので、コードを覚えたピアノ弾きの人が次に買う機種としてもいいと思いますよ。