ゲーム音楽の巣

フリー音楽素材サイト「音の園」の管理者及び作曲者。このブログではキーボーディスト、ゲームミュージックの作曲を中心に音楽雑記を書いています。健康第一。

【KURZWEIL製品】『ARTIS』『FORTE』『PC3K/A』『SP』どれを選ベば良い?

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「KURZWEIL」と言うメーカーを知っている人はあまり多く無いと思います。

 

製品のラインナップがシンセやキーボード、ピアノに偏ってるので、幅広い製品を取り扱う国内のKORG、YAMAHA、Rolandに比べると地名度は低いのですが、そのサウンドの威力はマニアを唸らせる説得力があります。

 

私も現在PC3シリーズの61鍵盤「PC361」を使用していますが、ストリングスやピアノ、オルガン、そしてシンセの音色は今でも全然使える音です。

 

目次

KURZWEILのキーボード

KURZWEILの製品のラインナップは大きく分けて、PCシリーズ (パフォーマンスコントローラー) とKシリーズ(ワークテーションシンセ) が主力でした。

 

PCシリーズは、ピアノに特化したステージキーボード

Kシリーズは、VASTと呼ばれる音創りが出来るシンセサイザー

 

Kシリーズの代表格「K2000/K2500/2600」は今でも名器と呼ばれており、中古市場でも結構な金額がつきます。

国内ではKURZWEILを知る人はあまりいなく、輸入しか無い上に金額も国内のシンセにくらべて高いので流通も少ないです。

 

PCシリーズはPC2まではプリセット頼りのキーボードで、エディットは最低限しか出来ませんが、PC3からはVASTの進化系である「ダイナミックVAST」を搭載して、サンプラーを排除したKシリーズとの融合を図りました。

 

実質、現在の主力でもある「PC3K/A」はPCシリーズの軽量化+Kシリーズのサウンドエンジンを合わせた両機種の後継機種担っています。

 

どれを選んだら良いか迷うKURZWEIL製品

本題ですが、KURZWEILはARTIS、FORTEと製品を出してきていますが、実はシンセとしてはすでにKシリーズ時代のVASTから殆ど構造が変わっていません。

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KRONOS、MONTAGE、FAなど、それぞれの国内メーカーも次世代製品を生み出そうと奮闘していますが、KURZWEIL的にはそのまんまなんですね。

確かにK2000が出た頃はデジタルシンセが盛り上がってきた時なので、当時のM1やensoniqなどのエディット構造に比べたら最先端突っ走っていて、今でも使いこなせばセミモジュラーと言われているくらい複雑なプロセシングがVASTは可能です。

ただ理解するまで時間がかかるのと、つまみもなく全て数値で設定していくため非常に厳しいです。

よほど音創りが好きじゃないと無理レベル。

ただエフェクトやアルゴリズムを少し適当にいじったり入れ替えたりして変な音作るくらいに遊ぶなら全然面白いし、基本的なパラメーターは動画を見ればわかると思います。

 

で、KURZWEILといえば、やはり「独特のピアノサウンド」が有名です。

きらびやかで個性的なピアノは、バンドサウンドでも埋もれることなく抜ける音で、逆に目立ちすぎるほど。アンサンブルに馴染ませると言うより、キーボードの音を全面に出そうとするプレイヤーはKURZWEILを選ぶような気がします。

 

そんなKURZWEILの現在のラインナップは

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FORTE/FORTE7/SE

ARTIS/ARTIS7/SE

PC3K6/7/8

PC3A6/7/8

SP456

 

と、「いやありすぎだろ種類w」ってなるくらいラインナップがあります。

 

キーボード、電子ピアノ、ステージピアノ、シンセに特化しているだけあって、プリセットシンセとしての割り切り感、セミウェイト、フルウェイト、ライトウェイト違いの豊富な鍵盤数のライナップで差別化を図っています。

KURZWEIL製品を選ぶときの基本的な考え方

これだけあるKURZWEILですが、どれを買えば良いか迷います。

そこで今から、まず大まかにはどれを選べば良いかを書いていきます。

 

キーボードと言うのは基本的は「どの音色をメインで使うか」で鍵盤数を決める、と言う流れになります。ここはかなり大事なポイントです。

なぜなら、どの鍵盤数を選んでも一長一短が発生してしまうからです。

 

簡単な例だと、88鍵盤のフルウェイテッドでオルガンを弾くのは正直きついです。

チャーチオルガン的なサウンドであればまだ良いのですが、ハモンドやジャズ的なフィーリングを得るには無理があります。

 

と言う感じで、KURZWEILの代名詞であるピアノサウンドを弾きたい場合でも、当然88鍵盤を選びたいところですが、各音色の使用頻度を割り出すと、76鍵盤、61鍵盤も捨て違いのです。

鍵盤のフィーリングが重要になってくるのと、本体重さの違い、ライブでの利便性、二台以上使う場合の組み合わせにも影響が出てくるからですね。

 

ラインナップの特徴 

FORTE、ARTIS、PC3K、PC3A、SPとありますが、順番に簡潔に特徴を書きます。

イメージ的には

FORTE

PC3K/A

ARTIS

SP

と言う順番で値段が高くなっていきます。

(FORTEとARTISには廉価版のSEシリーズが存在します)

ですが、自分に必要な機能、鍵盤数、サウンドをきちんと見直していることで、「どうせ高い金を払うなら一番トップのFORTE一択でしょ」って言う安易な選択を免れるかと思います。いや、お金があるならFORTEで良いのですが・・・。

SPシリーズ

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SPシリーズは昔からありますが、「ステージピアノ」に特化した機種です。

PCシリーズと違う点は、拡張ができないことと、プリセット数の弱さ、そして見た目が少しチープなデザインと言う点です。

デザインはSP4あたりから良くなってきました。

さらに、これを払拭してきたのが最近出た「SP6」です。

今までは2行しかない画面でしたが、グラフィカルな視認性を得たディスプレイを搭載し、インターフェースはこれまでにないほど進化しています。

 

SP6の廉価機種「SP1」は「SP4」に比べるとKB3やVAが排除されていますが、ピアノに特化しており、ジャーマンD グランドピアノを搭載しています。

オルガンはシンセは不要、と言う人はSP1でも良いと思います。

 

SP4シリーズは、PC3の後に出たこともあり、現在SPシリーズとしては少し中途半端な立ち位置です。

最新のピアノ音源であるジャーマンDグランドピアノは搭載していないので、PC3から音色をチョイスしたステージピアノ、みたいな感じです。

SP4-7、SP4-8では鍵盤数の違いの他、上位機種のSPS4-8はスピーカーも内蔵しています。

 

なので、基本的にSPシリーズは「エディットはしない、ピアノ重視」と言う人が買う機種になります。

PC3K/Aシリーズ

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PC3は、無印PC3、PC3K、PC3A、と言う順番で登場してきました。

 

整理すると

現在、無印PC3は生産終了しています。

PC3Kは、PC3にK25/26シリーズの音色を読み込んで使いたい、と言う人に発売されました。

その際に、サイドのパネルをウッドに変えたのがデザインの変更点です。

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それ以外はPC3と全く同じなので、Kシリーズの音を読み込みたい、と思わない人からすると殆ど意味はありません。

しかも、Kシリーズの音色は100%の再現性はない上に、音源構造やエフェクトもKシリーズと同じでないため、結局完全に再現できないことから、「やはりKはKで使うべきだ」と言う割り切りが現実的です。

 

その後にPC3Aが出ましたが、実はその前にオプションで「KORE64」と「ジャーマンDグランド」言う拡張音源が出ました。

 

その時はPC3はまだ生産していましたが、拡張音源KORE64は「無印PC3とPC3K」に、ジャーマンDグランドはPC3Kに装着可能でした。

 

PC3Aは、この二つの拡張音源を最初から搭載しています。

したがって、PC3は生産終了して、拡張音源を初期装備してPC3Aとして発売した、と言う流れになります。

 

今でも初期のPC3ユーザーがKORE64を拡張をしたい場合、生産終了しているので中古で入手するしかありません。安く見つけたら買って良いと思います。

それかPC3を売って、ジャーマングランドも付いているPC3Aを買う、という方がスッキリして良いかと思いますが、61鍵盤以外は一気に高くなるのでコスパが悪いです。

Kを読み込みたい人はPC3Kですが、ジャーマングランドは別売りです。

どうしてもジャーマンDグランドが必要か、と言われると「別にPC3のピアノで十分」と私は思ってます。それよかテクニックの方が重要です。

 

そのジャーマングランドは、SPシリーズには初期で搭載してます。

後から出る機種に最初から搭載していることから、ステージピアノの標準ピアノ音源と言う立ち位置なので、シンセサイザーサウンドも前面に出していくPC3を選ぶ場合、PC3のプリセットのピアノで十分な気がします。

 

PCシリーズはオプションの巨大リボンコントローラーを使用できるので、これにより次に書くFORTEとARTISとの差別化を図ってます。

(いやーうまいわ〜KURZWEIL・・・)

 

ARTISシリーズ

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ARTISはぶっちゃけいいとこ取りのステージピアノ。

ちょうどPC3の拡張音源が出た頃に発売したので、PC3、KORE64、ジャーマングランドから美味しい使える音色をチョイスして構成されています。

そしてインターフェースも8スライダーと、3バンドEQを操作できるので、「VASTはいらんから良い音でレイヤー、スプリットできれば良い」と言う人向けです。

 

なので、ARTISは値段的にも一番需要があるのでないかと思っています。

VASTは敷居が高くマニアックで、さらに理解するにも時間が必要なので (ぶっちゃけ理解できないが) 使わない機能はいらねーよ、って言う人はARTIS一択で良いと思います。

 

PC3K/AはVASTが使えますし、音色数も豊富でPC2シリーズの音源(拡張含む)も使えるのでプリセットは非常に多いです。

 

ARTISは「いや、VASTはえーわ。もうプリセットでも音良いんだからちょっと調整できれば十分よ」って人に向いてます。

 

私も正直昔だったらFORTEが欲しいと言うような性格でしたが、今ではARTISで十分だと思ってます。

 

FORTEシリーズ

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現在のKURZWEILの中では最高峰のワークステーションシンセです。

とにかく一番見た目で違うのは、8つのスライダーにLEDが付いてること、ディスプレイが拡大しカラーになり視認性が向上したことです。

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これによって今までのPC3シリーズと比べてエディット面でも少し画面の内容に違いが出ています。Kシリーズのサンプルも3Gまで読めます。

とにかく値段が値段なので、現段階で全ての資産を積んでます、と言う感じです。

ですが値段が値段なので、自宅スタジオで使うとかなら良いのですが、ライブなど外に運びたくなくなるくらい高いので、よほどの金持ちでない限り精神的負担はでかいものと思われます。

終わりに

ザックリとですが、KURZWEILのキーボードをまとめてみました。

PC3の廉価版であるPC3LEもありますが、日本では取り扱いがなくなった模様です。

私も昔使ってましたが、KORGのM3を真似したパッドがあったりして、あれはあれで面白かったですね。

KURZWEILはとにかく個性派を目指す人にはもってこい機種です。

VASTまで踏み込むと大変ですが、プリセットのちょいエディットでも十分個性が出ますし、VASTも使えれば満足度は高いものと思われます。

幅広く対応したいなら、76鍵盤のセミウェイテッドがおすすめです。

ピアノ、オルガン、シンセ、ストリングスなどどれもオールマイティに対応できますが、やはりピアノだけはかなり慣れが必要です。

どの音色に比重を置くかで鍵盤数が決まるので、そこがKURZWEILの難しいところですね。