ゲーム音楽の巣

フリー音楽素材サイト「音の園」の管理者及び作曲者。このブログではキーボーディスト、ゲームミュージックの作曲を中心に音楽雑記を書いています。健康第一。

良い曲とは? 名曲の『本質』に迫る【制約の中で最高のアレンジを目指す技術】について

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今日は曲の品質や、作編曲の技術などについて少し考えてみたいと思います。

どういった曲が良い曲なのでしょうか?

質が高い曲って基準とかあるのか、という話ですが、色々な「音楽素材サイト」を見ていると、それぞれのサイトの作曲者の活動開始時期によって音楽素材の品質が異なっていると感じました。

一概に「」と言っても色々と抽象的で解釈が多岐に渡りそうですが、最近作曲を始めた人が作った曲と、10年以上前から作曲している人とでは、作曲経験はもちろん製作環境も違います。

その中でも私が気になったのは「使用している音源」と「アレンジ技術」でした。

色々な音楽素材サイトを紹介していますので、よろしければご覧ください。

andy-hiroyuki.hatenablog.com

目次

MIDI音源

MIDI音源」は今の世代からは「あのチープな音源でしょ?」と誤解されやすいのですが、当初はその互換性から爆発的にシェアされました。

当時はネット回線が厳しい状態であった為、データ量が少ない MIDI で作られた曲は画期的でした。規格さえ統一すれば、そのフォーマット内で制作された曲データ (楽譜のこと、MIDIファイルともいう) をやり取りするだけで、その楽譜の内容通り再生してくれるのです。

今の MP3 のような実際の音のファイルそのものではなく、やり取りするのは「楽譜データのみ」だけなので非常に少ないデータ容量でやり取りできたのです。

しかしその互換性を活かすため音が犠牲になっており、今の MP3 のような「作曲者が使いたい本当の音で鳴らせなかった」などの短所もあります。

現在主流のファイル形式「MP3」

今ではネット回線も早く、大容量を扱えるようになった為、MP3 ファイルを扱うのが主流となりました。MP3 なら作曲者が作りたい音で曲を作り、その音のまま視聴者へ届けることが可能です。

データ量を少なくする為の圧縮技術も優れており、聴覚上ほぼ全く支障のないレベルで圧縮可能です。今ではこれ以外に考えられなくなりましたね。

楽曲の質を左右するものとは?

最近、RPGツクールを始めとしたアマチュアゲームなどの BGM で求められる「最低限のクオリティ」はどのようなレベルなのか? という疑問があります。

ここで言う質とは MP3 や WAV といった曲ファイルそのものの品質のことではなく、「使用音源」に限定します。

例えば昔なら8bitミュージック。PSG音源 とも呼ばれるこの音源は、音楽のジャンルや制限の事情などを何も知らない人が聴けば、「チープなピコピコしたファミコンの音」と一括りにされてしまうかもしれません。

当時はあくまで「この音での表現しか出来なかった」という、あくまで「制限」でしかありませんでしたが、今ではそれが、個性またはジャンルの一つとして確立しており、一つの需要として成立しています。

PSG音源 (ファミコン音源) についてはこちら

andy-hiroyuki.hatenablog.com

あくまで「アレンジ」であることを理解する

MIDI音源は、上記の PSG音源 に比べると楽器の音だと分かるレベルまでの印象となり、表現の幅はかなり広がりました。ですが、現在の音楽で主流な生音に比べるとまだまだ作られた音といった印象が拭えません。

このMIDI音源で作られた曲にも、制約については同じことが言えると思います。

ただ前述したように、MIDI音源 は互換性を重視した結果の単なる規格に過ぎないので、楽曲の質を語る要素では無いと思います。

同じ楽譜データで現在主流の音源でアレンジすれば全くの別物になるでしょう。

となると、MIDI曲は単なるMIDI音源でのアレンジ、といった方が分かりやすいかもしれません。オーケストラの曲をゲームボーイ用の音源でそれ用にアレンジする、そんなイメージでしょうか。

「質が良い」とはどう言うことか?

質が高い曲というのは、使用する音源を始めとした、あらゆる制約の中でキレイに聴こえるようにアレンジ出来る技術だと思います。 簡単に言ってしまえば、曲が鳴る媒体の特徴や聴こえ方を理解した上で、ベストに聴こえるように作り込んであるかどうか。

ゲームで例えるなら、曲を作っている時に聴いているスピーカーだけではなく、ゲームボーイ、ニンテンドーDS、PS Vita などのスピーカーで綺麗に聴こるかを考えた上でアレンジ調整すること。

音源や同時発音数に制限があるならば、その制約の中で工夫する。

逆にもっと良い音源が使えたとしても、ゲームのグラフィックに合わせてあえて少しチープな音を使うなど、色々な技術があります。

製品で例えると、

良い製品はデザインや機能そのものなど総合的な評価になると思います。

また「質の良い製品」というのもゲームなどと同様で、きちんと細部までこだわり、与えられた制限の中、素材を最大限に活かしつつも手抜きなく作られていることなど「技術力による品質の高さ」と考えることも出来ます。

重複しますが、曲に関しても、MIDI 音源、ファミコン音源という素材から曲を作らなければならなくとも、それらを活かせるような技術できちんと細部まで作り込んであれば「質が高い曲」と言えます。

それに加えてメロディが良ければ良い曲」となるかもしれません。

また、たとえ良い音源を使用して作曲したとしても、編曲や作曲技術が追いついておらず、音 (素材) だけに頼り切った曲に関しても同じことが言えます。

オーケストラの楽器の音を使っているのに、各楽器の技法や長所が活かされていない編曲だったり、音の重なり方や音域を無視したような場合なども質が良いとは言えないでしょう。

「ファミコン音源」だから、「スーファミ音源」だから、「しょぼいオーケストラの音源」だから、「おもちゃみたいなギターの音」だから曲もしょぼい、ということはありません。

つまり本来は音源自体ではなく、「その音源を使って表現しなければならないという制約の中で、適性なアレンジを施す事が出来るかどうか」に注目すべきだと思います。

良い曲は「メロディ」が全て

そんな音源のチープさをカバー出来る要素が一つだけあり、それが前述した「メロディ」だと思います。メロディだけはどんな制約の中でも一番重要な位置にいます。

少なくともメロディが無い環境音楽、またはアンビエント系などのジャンル以外においては、やはりメロディが曲の良さを左右させる一番重要な要素になってくると思います。

環境音楽についてはこちら

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ファミコンの音楽などに「名曲」が多いのも、「メロディ」で勝負している曲がほぼ大半を占めている事が上げられます。

ドラゴンクエストやファイナルファンタジー、スーパーマリオやロックマン、ウィザードリィなど、メロディが良い曲は音源を変更しても良い曲なのです。

加えて高度なアレンジ力で作曲されている為、ファミコン音楽は、PSG音源 でも技術力に裏付けられた品質の高い曲になっています。

各ゲームなどに見る音源の需要

16bit 時代のいわゆる「PCM音源」は、今でもRPGツクールなどを始めとするゲーム音楽にも使われており「BGMの質の基準」となっているように思えます。

それが前述した MIDI音源。普遍性があり、ゲームらしさを残している点が、アマチュアが手を出せるグラフィックレベルと違和感無くとけ込んでいるように思えます。

グラフィックレベルと音源バランスについてはこちら

andy-hiroyuki.hatenablog.com

これも、16bit 時代のジャンルと言い切ってしまえばそれまでですが、8bit に比べて間違いなく需要のカテゴリーは広いような気がします。生音に比べチープな音だと分かっていても、実際に自分がゲームをプレイしていると違和感を感じないので不思議なものです。

ということは、音源の質(生音なのか、らしい音なのか)に合わせて、脳が「ゲーム音楽」というジャンルとして認識、処理しているのかもしれません。

スーファミで一気にゲームジャンルが増えたのも、グラフィックやハード性能だけでなく、音楽面の演出においても表現が広がったからだと思います。

需要別に「適性な音源」で対応する 

これから音楽素材を作っていく上でこの「質を操れることは重要」だと思います。

言うなれば、それを「アレンジ」と呼ぶのかもしれませんが・・・。

素材として配るなら、カテゴリーをさらに細分化し「場面別」「ジャンル別」だけで無く「音源別」「クオリティ別」も考えた方が良いかもしれません。

いきなりストリングス音源だけ生々しくなるのに、バンドサウンド系の音源はチープだったり、同じレベルのサンプリング音源で作らないとまとまらないので、ある意味、制限の中で作る事は重要ですね。

まとめ

  • 曲の質は音源に左右されない。その音源を制約の一つとして扱う場合において、魅力的に曲を表現する技術があるかどうか。
  • 使う音源に差があり過ぎると、曲の質云々以前の問題としてまとまり感に影響してくる。それでも技術で違和感無くまとめれるなら問題無い。
  • 質を操るとは、音源を制限されても、その制限の中で最高のパフォーマンス (作曲、編曲) をすること
  • メロディは、あらゆる作曲環境で曲の良さを左右する要素である。
  • ゲーム音楽」と認識することによって、チープな音源も脳が経験から暗示的に一つのジャンルとして認識し、そういうものだと無意識に聴いている。

最後に

作曲者によっては「活動開始時期」を始めとして、好みや趣向も含めて使用している音源も機材も違うと思いますが、私が感じたのは「どんな音源を使っていようと、技術がある作曲者の曲のクオリティは高い」という事でした。

最近の音源はどんどん良くなっていますので、結構誤摩化しが利く事も多いと思います。ただ、チープな音源で修行してきた猛者達は、音源がリアルになってもさらにパフォーマンスを発揮し、制約されてもその中でベストなアレンジに仕上げる技術を持っています。

そんな昔の音源で作られている曲を注意深く聴くことも、曲の品質を向上させるヒントになると思います。

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