何もないところから何かを生み出す
ピアノで楽譜通りの演奏をする、または耳コピーで既存の曲を演奏する
それはそれで楽しいのですが、たまにはアドリブでピアノを奏でるのも楽しいんです。
それが、演奏と作曲の中間に位置する音楽表現
「即興演奏 (インプロヴィゼーション)」
インプロを制することができれば、音楽の表現方法、また作曲手段の幅を広げることが出来るんですね。
目次
即興演奏をどう楽しむ?
即興演奏は言ってしまえば「アドリブ」です。
アドリブをどう楽しむのかが今回考えたいことなんです。
早速ですが私自身の経験から、実際に私がピアノ即興演奏のどこを楽しんでやっているかを書いてみます。
こちらが先日弾いた演奏
全部で8曲ですが、ファンタジーな湖とかをイメージして弾きました。
湖の記憶、、ここで起きた何かしらの出来事、そんな小さな物語を想像します。
使用したピアノ音源は、Logic X 付属の EXS24「Grand Piano」です。
レンジが広く、ドンシャリできらびやかな音色です。
中間のベロシティのレンジが雑というか荒いのですが、そこが強弱の表現をしやすい要因とも言える音色なので、そういう演奏にはもってこいです。
リバーブは付属のPtVerbをピアノトラックに、マスターにSpace Designerを挿して好みの空気感を作りました。
リバーブを2種類足しての音作りを私はよくやりますが、ピアノソロ曲であれば独特の空気を作れるのでオススメです。
即興演奏で意識すること
まず大事なことは「どんな演奏表現を目指すのか」を大雑把に意識しながら弾くことです。
これで演奏途中に、展開、弾く内容がブレまくる確率を軽減できます。
どんなキーで始めるか、どんなコードを弾くか、スケールは何を使うか、アルペジオ中心でいくとか、曲の展開は、、、など
色々あるのですが、、、一曲一曲の役割、キャラクターを意識すると複数の即興曲からなるアルバムとしての住み分けも出来ていいと思います。
もっとカンタンにいうと、速い曲、とか、メジャーコードなのか、とかそんな分かりやすさ。
あとは短いメロディのモチーフをきっかけに展開したり、アルペジオの型を意識したり。
全曲、複数曲同じような雰囲気で統一するのもアリです。
自分がどんな即興を目指すのか
録音前に大雑把に決めておくと良い即興になることが多いです。
それから1番は、イメージを持って弾く、これは私の場合かなり演奏に反映される自覚がありますので意識しています。
自分の即興スタイルを決める
私は基本、9thやオンコードを中心に展開させると決めてますが、これは曲やメロディ云々ではなく、響き (空気感) を重視 (意識) している為です。
また、大きなメロディの動きの隙間に早いパッセージや装飾を入れることも多いですが、この目的は、演奏に緩急を付けることを意識しています。
無難にずっとゆっくり弾くのも安全で良いですが、なるべく一回聴いただけでは分かりにくいような曲にするため、思い切って転調してみたり。
総じて、繰り返し何度も部屋や車で流せるような雰囲気を目指しています。
私が追求してる音楽の一つにアンビエントのようなピアノ即興がありますが、今回はそんなイメージで演奏してます。
即興力と緊張感
私は即興力というのは、即興者の熟練度で内容が変わることが魅力的であると感じてます。
それは音楽や絵や漫才などにも共通することです。
例えるならば、絵が上手い絵師が描くラフスケッチとでもいいますか、、上手い人なら十分でないかこれで、、と思ったりします。
爆笑問題がアドリブでいきなり喋り出しても一定の安定感のある笑いがあります。でも内容はアドリブなのでその時しか出ない内容で新鮮。
話を演奏に戻して、
即興演奏はアドリブなので、正直な話、難しいことは弾けません。自分の力量以上のをすると普通にミスりますので、その範囲内でコントロールすることが重要だったりします。
練習してないことを即興でするわけなので、調子にのると失敗するかミスタッチをして、さらに展開も意味不明になります。
手グセは手グセですが、即興曲を演奏している、ということを一曲が終わるまで意識したいですね。
途中まで良い雰囲気だったのに、途中から変な展開になってしまったり、一回ミスしたりコードを間違えてやり直しもありえます。
しかし、それらを弾く前から決めて練習してしまうとそれは即興ではないので本末転倒、、ですが、ここが「即興時の緊張感」を決定することになるのです。
そんな緊張感から、自分ならどんな演奏を引き出したいのか、それを見いだすことが大事です。
完璧ではないメロディの魅力
即興でメロディを弾くというのは、自分の音程感のセンスを試されている、と言っても過言ではないでしょう。
作曲であればデモやスケッチから詰めることが出来ますが、アドリブはそうではありません。
完璧なメロディを弾くことは無理ですが、コードに対してスケールが外れていなければ、メロディはだいたいなんとかなります。
どちらかといえばこれらの緊張感を逆手にとって、相対音感を頼りにメロディを紡いでいくほうが面白い結果になると私は踏んでいます。
例えば、こういう風に音程をもって行きたい、と弾きながら思っていても、それは絶対音感がないと即興では音を外す可能性が高いです。
音は間違っていないけど、一度か三度か五度に着地する、または経過するかでメロディの解決感がなかったり「あ、今のとこ惜しいな〜」ってなったりします。
その未完成さが即興メロディの魅力。
コード進行がハッキリしているメロディアスな即興はなかなか難しいので、アルペジオやペダル、装飾音符、転調を駆使しながら、とにかくタッチの強弱を意識しています。
あとはなるべく、モロなコード弾きを避けると展開が見えなくなるので面白くなりますね。
イメージを持って弾く
私は作業用BGMで流せるような感じで聴けるものがいいなぁと思い、そのような感じで短い即興曲をいくつか弾き、20分程度のアルバムにすることを毎回意識してます。
曲名はあとから聴き直しながら自分でイメージが湧いたものをつけましたが、どんな曲名をつけるかで曲のイメージ変わるので楽しいですよ。
多少のミスは生々しいので、致命的でなければ残したいところですね。
完璧に弾くことが目的ではないので、、今回8曲ですが、実際には15回くらい録りました。
ミスタッチが多いトラックや、自分で甘口に聴いても内容が厳しいな、というのはさすがに削除します。
やはり速い曲やリズミカルな曲、タイトな曲は即興が難しいので、かなり演奏が不安定なのがわかります。1番奏者の実力が出てしまう部分ですね。
6曲目の「水兵隊」という曲、聴いてて弾き直したくなりますが、同じ演奏は出来ないし、面白い部分も多いのでそちらを優先した感じです。
まぁ、実は何を弾いたか覚えてないので笑、、、そういう意味でやはり一発勝負なのです。
「移調」を駆使して、曲に合った響きを探す
人によっては邪道と思うかもしれませんが、私は移調 (トランスポーズ) 大好きで、必ず使います。
キーを変えたら響きが全く変わる、 この感覚が即興演奏を何倍にも楽しくしてくれるんですね。逆にこれがないと同じような即興になってしまうことも多いので、ツールとして使うようなイメージです。
私は作曲する時もですが、曲の内容によって適切な響きやキーがあると思っていて、それを±5辺りで探します。
弾いた後にチェンジするのも良いですが、絶対音感がなければ移調して鍵盤で弾くことで思いもよらぬ響きから、新鮮なフレーズを導き出せることにも期待します。
移調による音感への懸念
絶対音感がある人は鍵盤の配列と音が連動しているからか、気持ち悪くて出来ない、と聞きます。
私は持ち合わせていないのでこの点に関してはラッキーかな、と思っていますが、、
アコースティックピアノでは無理ですが、キーボードやステージピアノであれば可能ですので、積極的に使っていきたいですね。
ただ目的の無い過度な移調は、自分の音程感を狂わす原因にもなるので、それを避けたい場合は使わずに録音して、後からキーチェンジしてもいいと思います。
私は普段と違う響きから、普段と違うフレーズを期待するので弾く段階から使いますが、やはり曲数をこなしてくると、自分が得意なキーやフレーズ、手グセなどは決まってくるんです。
これは作曲にも言えることですが、、すると毎度同じ雰囲気の曲になりがちなんですね。
それを打破したいな、と。
もし、人前で弾いたりあくまでグランドの生演奏で弾けることに拘る、という人であれば純粋に様々なキーで弾けることが望ましいですが、
私のように創ることが目的で、即興で弾いた内容の「新鮮さ、緊張感、予期せぬ展開など、その時の一瞬を写真のように捉える」、ということを優先するのであれば、創作の考えを広げれるのではないでしょうか?
面白いものを創ることを優先するなら、生み出し方に関しても色んな手段を試してみるべきだと思います。
最後に
インプロヴィゼーションは、あとで聴き返した時に意外な発見があることに面白みがあります。
「こんな風に弾いていたのか」
「ここのフレーズ、曲作る時のモチーフに使えるな」など
そんな感じで、自分なりの即興演奏を追求することは新たな自分の引き出しや発見に繋がると思うので、音を出すなら積極的に録音しておきたいですね。