Photo by Roland
「何でこんなに重たいのよ・・・」
ピアノから鍵盤楽器をスタートしたあなた。キーボードを始めたけど、ピアノの音色はやっぱりピアノタッチで弾きたい。ライブもスタジオもピアノタッチがいい。
そこでキーボードのラインナップを見ていくと、どれもピアノタッチは88鍵盤で重たい上に幅もあって運びにくそう・・・(汗)
今日はそんなステージピアノや88鍵盤のシンセサイザーを、ライブやスタジオで使おうと思っている方、またはすでに導入している方へ、「88鍵盤のキーボードを運ぶ上で注意する点」について、筆者の経験から具体的にお話ししたいと思います。
ぜひピアノタッチ志向のキーボーディストの方は、運搬方法について見直してみましょう☆
目次
はじめに
88鍵盤の重たいキーボード、ステージピアノ。
これらをライブハウス、スタジオへ運ぶのは本当に難題です。
単に持ち運ぶ、可搬性という点だけを考えるなら重さだけを重視すればその選択基準は決して難しくはありません。
キーボーディストが今日も機材選定と戦っている理由は、「重さ (運搬)」の問題だけでなく、「値段」はもちろん、自分の要求を満たす「機能性 (こだわり)」も考慮する必要があるからです。
ステージピアノや88鍵盤のキーボードを買うことに悩んでいる方に共通していることは主に以下の通りです。
- 持ち運べるか
- ピアノタッチにこだわりたいか
- 88鍵盤の最大音域が必要か
まだまだあるかもしれません。
どれもキーボーディストにとってかなり重要な項目ばかりですが、今日は「持ち運ぶこと」にフォーカスして書いてみたいと思います。
持ち運べるかどうか
ライブでスタジオで使いたいけど持ち運べなければ話になりませんので、あなたの運搬手段を確認しましょう。
車を持っているか、身長はあるか、力はあるか、ということですね。
ひとまず車があればOKだと思いますが、大切な機材なので運ぶ際には重くなっても絶対にケースに入れたいところです。
ケースですが、キャスター付きのセミハードで十分ですよ。
こちらは GATOR という定番のケースですが、キャスター付きでクッションも入っており、ペダルや譜面、シールドなどの小物を入れるスペースもあります。
筆者も88鍵盤にはこれを使っています。
逆にハードケースでは非常に大変な思いを強いられるでしょう (もはや罰ゲーム)
車を出すのがあなたではなく他のメンバーであったり、状況は人それぞれですよね。
最終地点であるスタジオ、ライブハウスに持ち運ぶ際、エレベーターが使える場所ももちろんありますが、中には狭い階段を降りるしかない非常に危険な瞬間も多々あります。
場合によっては下りだけでなく、階段を上った先にある場合もあるでしょう。
従って、運搬時には毎回かなりの神経を使うことになります。
ケースを選ぶ時の注意点
キーボードのケースは大きく3種類あります。
ソフトケース、セミハードケース、ハードケースになりますが目的や状況、キーボードの種類や重さなどを考えて選択したいところです。
今回88鍵盤でケースを選ぶわけですが、最大の注意点は外寸を見ることではなく、「内寸のサイズを確認する」ことです。
ケースのサイズは目安として「61key、76key、88key」とあります。
よくあるのが、88鍵盤のシンセだからと言って何も考えずに88鍵盤用を買ってしまうというものですね。これ危険。
ケースによっては内寸に余裕をもたせている場合があり、88だとブカブカ、76のケースで十分だった、ということが良くあります。同様に61と76も然りです。
ステージピアノなのか、ワークステーションシンセサイザーの88鍵盤なのか、電子ピアノなのかでもサイズ (特に幅と奥行き) が違ってきます。
ステージピアノ、電子ピアノは大体同じですが、ワークステーションシンセについては現行機種か古い機種かでも「奥行き」が結構違うので要チェックです◎
従って、必ずサイズは確認するようにしましょう。
筆者の運搬に対する悩み
筆者は色々バンドをやりましたが、その中でも88鍵盤のシンセサイザーで演奏するスタイルのバンドなどもありました (主にプログレメタル系)
当然ながら、機材は30万以上出して買ったものであったので非常に高額。大枚叩いて購入した大切な機材です、破損などは絶対に避けたいと考えるのは当然の事。
そこで、あえて重くても運ぶ時には過剰にもハードケースを使っていました。
しかしこれが失敗で、本体とケースを合わせると重量が40キロにもなり、身長175cm、体重68Kg (体重は関係ない) という当時筋トレ思考の筆者でも参っていましたね。
もうですね、毎回腕がパンパンで、仕舞いには腰を悪くしてしまった!
大変な瞬間は移動時はもちろん、積み上げ、セッティング、撤収時、車への載積時・・・そう、全てなのです (泣)
腰を悪くしてからはセミハードケースに変えましたが、それから幾分楽にはなりました・・・が、やはりそれでも普通に重いんですよね (汗)
運搬で腰を悪くする原因
運搬の際に腰を悪くする原因は二つあり、一つはよくあるギックリ系か、瞬発的な傷め方をした時です。これは参りますね、気を抜いたり慣れて起きた時に起こります。
で、もう一つが厄介で
「不自然な姿勢で運ぶことで、腰へ小さな負担を継続してかけ続けてしまう事」です。
例えば、61鍵盤のシンセを運ぶのであれば、重さも適度で、幅も両手の内に収まりますので、ダンボールを手前に持つように運べます。
いたってこれはまだ自然な姿勢なので問題ありません。
問題なのは下の図 (手書きでスミマセン)
88鍵盤で20キロ以上ともなるシンセやステージピアノの場合だと、幅が広いのでどうやっても腰をひねるように持ち運ぶことになります。
上記のように、私は毎回左手を前に、右手を後ろに、鍵盤が右側に来るように運んでいました。すると左後ろの腰を痛めるのです。
もちろん、鍵盤の重さによって負担はさらに増えます。
「あ〜腰いてぇ〜 (泣)」
実はこのように、小さな負担を同じ箇所に何度もかけ続けることによって、最終的には徐々に腰を痛め、それが慢性的な腰の痛みに発展してしまいます。
一回や二回ならいいのです。
スタジオやライブ、そして載積時、往復する回数を考えていくと、何十回以上もその姿勢で運ぶことになります。恐ろしい。
筆者もこれに気付いた時は時すでに遅しで、結構な痛みになっていました。
でもこれが普通みたいな感覚でいましたし、まだ20代前半だったのでそれほど気に留めてもいませんでしたが・・・。
結局一番怖いのは、運んだ日が少し痛んだり疲れても、休めば回復していることが錯覚を起こすのですね。
日が経てばちょっと治るからまた運ぶ、また治るからまた運ぶ。
これがちょっとずつチクチク同じ場所に負担をかけてしまう原因なのです。そして、本当に痛くなった時にようやく自覚する、というパターン。
言うまでもなく人間にとって、腰は本当に大事なんです。ここを悪くすると全ての行動に悪影響を及ぼしますから。
つまり、これだけしっかりリスクを考えた上で「88鍵盤を運ぶ」ということを考えていく必要があるのです。
メンバーにとことん頼るべき
筆者は上記の経験から、ボーカルを優先的に運搬サポートとして選定。
二人でキーボードを運ぶということは、重さをシェア、軽減することだけではなく、「不自然な姿勢をしないこと」が本来目指すべき部分なのです。
くどいですが「腰をひねるな!」ということを筆者は声を大にして言いたいのです。
「よしわかった!」
自分で無理に持ち運べたとしても、自分で運んだほうが早いとしても、メンバーに頼ってください。楽器を弾かないボーカルがいたらターゲットはその人です。
二人で持ち運ぶ事で、腰への負担を回避する事が可能となります。
少し時間がかかったり効率が悪くなってしまう場合もあると思いますが、腰への負担を回避したいのであれば、88鍵盤は二人で運ぶのが基本、と覚えておきましょう。
最後に
88鍵盤をライブハウス、スタジオへ持ち運びたい!と考えているあなた、いかがでしたでしょうか?
一昔に比べると今では88鍵盤のシンセでも軽量の物は色々ありますが、どれだけ軽量になってもやはりタッチや音色、エディット面などで限界値、妥協点は存在します。
おそらく DAW 用の軽量な MIDI キーボードを除いて、ライブ向けの88鍵盤のフルウェイテッドでは本体だけでもまだ10キロを超えますね。
加えて寸法に関しても、どの機種もだいたい同じ大きさや長さになります。
KORG KROSS の88keyでもまだ12.4Kg あります (かなり軽量ですけど)
腰をヒネる回数をなるべく避け、一人で運べたとしても「あえて二人で持ち運ぶ」という事が腰への負担をゼロに近づける習慣に繋がります。
それが健康面から見てライブ活動、バンドを長く続けれることにも繋がるのです。
一見ただ持ち運ぶだけの事ですが、ぜひ運搬面でのプロ意識を心がけましょう☆