ゲーム音楽の巣

フリー音楽素材サイト「音の園」の管理者及び作曲者。このブログではキーボーディスト、ゲームミュージックの作曲を中心に音楽雑記を書いています。健康第一。

ゲーム音楽レビュー #2 クリスタルのある洞窟 from FF3[FC]

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ファイナルファンタジー3 のゲーム音楽レビュー

#2 クリスタルのある洞窟

この曲はプレイヤーの名前を入力した後、ゲームがスタートした時に最初に聴く曲なので、多くのプレイヤーの記憶に残っている曲でしょう。

 

 

使われている場面としては、曲名通りゲーム上で

「クリスタルがある洞窟」で流れます。

風のクリスタル、火のクリスタル、水のクリスタル、土のクリスタル

 

これらのクリスタルが存在する特別なダンジョンで流れます。

 

しかし一番最初にこの曲を聴くと、まだFF3のゲーム体験において他に比べる曲が無いので、特に何も感じることは無いと思うのですが、中盤、後半になるにつれてこの曲がいかに特別な曲だというのが分かります。

 

ダンジョンに入ってこの曲が流れた時「ヤバい、ここにクリスタルがある」と緊張したのを覚えています。「普通のダンジョンではない、ボスもいるな、何かが起きる」そんな予知をプレイヤーは感じたのではないでしょうか?

 

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(FF3で始まりの洞窟とも呼ばれる、このダンジョンの最新部には風のクリスタルがあり、主人公たちは風のクリスタルより世界を救えと啓示を受けることとなる)

プレイヤーとしての視点

通常、ダンジョンの曲は恐怖感があったり、空間を感じさせるような「間」があったりするのですが、この曲に関しては「大きな存在に導かれる」そんな印象を感じます。

 

特にその印象をプレイヤーに与える要因となっているのが曲全体で駆使されている

「イントロの旋律」ではないでしょうか?

この部分があると無いとでは曲の印象がかなり違います。

イントロがあることが特別な印象を与える要因になっています。

作曲者としての視点

この曲の構成は

イントロ→主題→展開→主題

このようになっています。

イントロに入る前に洞窟に落ちて着地する効果音も入ってますがそれは割合します。

 

イントロ

イントロは旋律が濃密に詰め込まれていて、1音1音すべてに意味がある旋律になっています。他のゲーム音楽においても、このパターンの旋律はあまり無いでしょう。

なのでこの部分だけ聴いてもFFのあの曲だと一発で分かるほどこの旋律は作り込まれています。そしてこのアルペジオは主題、展開の後ろでオクターブ下でずっと鳴り続けています。

 

主題

ここで濃密な旋律から解放され一気にロングトーンのメロディが展開されます。

長い音符でメロディを構成することによって、プレイヤーにゆったりな時間の流れを感じさせることが出来ます。別のダンジョンの曲とは違って、この曲に限ってはダンジョンの曲なのにどこか暖かみが感じられます。

また、メロディの特徴として、後半に3連符を用いることにより前半のロングトーンに対してメリハリに成功しています。メロディ、ベースライン同時に3連符になっています。

 

ここでロングトーンの旋律部分にトレモロという奏法が使用されています。

トレモロ奏法を用いることによってロングトーンでありながらにしてメロディの印象をより深いものにしています。またPSG音源(ファミコン音源)ならではの音色の深み、特徴もあって相乗効果になっています。

 

トレモロ奏法とは

トレモロ(: tremolo)とは、単一の高さの音を連続して小刻みに演奏する技法、ならびに複数の高さの音を交互に小刻みに演奏する技法である。後者はバッテリーとも呼ばれる。2度で隣接する2つの高さの音を相互に反復する場合は「トリル」であり、区別が付かないことが多い。

ギターアーミングを参照)、マンドリンなどの撥弦楽器や、打楽器のように音が非常に早く減衰する楽器では、長く延ばす音の代用として多用される。また、ヴァイオリンなどの擦弦楽器では、音を短く反復することによる、通常の演奏とは異なる音色を求めて行われる。ピアノでも同様であるが、擦弦楽器のトレモロの模倣として行われることも多い。

イタリア語tremoloとは、振動、ゆらぎの意味である。

 

PSG音源(ファミコン音源)は基本的には楽器の音ではないので、逆に作り手が楽器の音に似せてあげなければなりません。その時にADSRというパラメータを設定しますが、ここでは割合します。

音を鳴らすと音量が変化するのか、音がどれくらい長く鳴り続けるのか、また音量が上がらずに鳴り続けるのか、といったことまで設定出来てしまいます。

 

話を戻すと、この曲のメロディ部分は何の楽器を元にイメージして作られたのか?

ということです。それによりこのトレモロ奏法を用いた意味を見いだせるでしょう。

 

もちろん作曲者の植松さんが何かの楽器を元にイメージして作曲したのか、最初からこの音源でイメージしてこのような奏法を用いたのかは不明なのでまた別の話になります。

このように曲を聴く私たちは想像する余地を残しておいた方が楽しみが増すと思いますw

 

展開

このパートでは主題に対して変化を持たせる為か、頭からグリッサンドが使用されています。私にとってはそれが、このパートから私は「美しさ」を感じる要因となっています。このパートは水晶の洞窟のイメージが一番感じられる部分ですね。

 

旋律の尻に間があるのですが、この間が印象的だったりします。奥で同時にイントロの旋律が流れているのですが、これが間を感じさせず、イントロの旋律を全体で使用することに成功しています。これにより曲全体で統一感が出ています

 

 

次回は 

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