Photo by Igrasil Studio
先月の中旬にDLCエピソードの配信をした Bloody Chronicles ですが、ついに長い本編も日本語、中国語対応しました。
これによって、アーリーアクセス版を卒業し、正規販売に。
僕自身も日本語対応したバージョンを再度一からプレイしてますが、翻訳も素晴らしくてぜひ多くの日本人プレイヤーの方にも遊んでいただきたいです。
(膨大なテキストを日本語翻訳された"ゆず茶"さんのブログはこちら)
日本語で英語ボイスを全部聞かずに読んでいけば15時間くらいで一通り終わりまでいけると思います。
作ってた時のエピソードなど
BGMで参加した時はちょうど一年前でしたが、色々悩みながら、焦りながら、そして楽しく作曲したのを覚えてます。
作品自体はキックスターター以前の頃から見ると、4.5年くらい前から企画がスタートしてると思いますが、イグラシルスタジオ様にとってもデビュー作品。
やはりリリースするまでに色々障壁があり大変だったと推します。
「多国籍チームで結成された作品」
色々な国籍の方の力を借りて作られる世界観。
言語の壁、多くのパートナーとのやりとり、編集、開発や実装、そしてコミュニティの運営。
まさにネットで世界と繋がり、今時ならではな制作体制を体感してます。
ブラッディクロニクルズは、ADVゲームの中でも「ビジュアルノベル」と言うジャンルですが、弟切草などのサウンドノベルや、声がないアドベンチャーゲームは昔からよくプレイしていました。
キャラ絵があるビジュアルノベル、テキストや怖いサウンドにスポットを当てて作られてるサウンドノベル。
あの当時、テキストアドベンチャーの音楽を意識し出したのは、多分セガサターンの「EVE Burrst Error」からだったと思います。
あの音楽がすごくカッコよかった。
それから探偵ゲーム、と言うジャンルがすごく好きで、菅野ひろゆきシリーズ、神宮寺三郎シリーズ、クロス探偵物語や、ミッシングパーツなど、そういった作品のサウンドをもう一度見直したり。
作曲で大事だと思っているのは「メロディやリズム」なんですが、サウンドトラックにおいては「音色」も重要だと思ってて。
ゲーム中は色々な曲が登場するので統一が難しい中、メロディ楽器に使う音色などをなるべく同じにして曲調を変えることで、世界観の繋がりを意識しました。
声も入るので、歌えるような細かい動きのするメロディは正直邪魔になるかな、と思っていたのですが、やはりメロディが無いとワクワク感が出なかったり、サウンドトラックで聴き直した時に思い出せないような感じだったり。
背景に溶け込むべき曲と、少し前に出てくるべき曲、それぞれがバランスよく調和すべきなのかと。
キーワードの1つが「探偵」なのでジャズのような雰囲気の要望もあったりと。
その辺はサックスやトランペットなどで雰囲気を出し、ゲームっぽさを損なわないようなメロディラインを意識しました。
BCの世界観
各シーンに合う曲を作るのはもちろんなんですが、
「ブラッディクロニクルズの世界観とは?」
これが自分にとって一番の課題でした。
そもそも僕自身もBCのストーリーや展開が分かっていない状態だったので、自分なりにネットで集めれる情報は必死に集めましたね。
イグラシルスタジオ様がどんな作品に影響を受けたのか、そういった作品を見て聴いて雰囲気を掴んだりと、作曲以外のことに時間をかけましたね。
先ほど書いたように「ジャズっぽいの」と言われても、普通にジャズがほしい訳ではなかったりと、色々最初は苦労としたのを覚えています。
ダークなシーンは割と作りやすいのですが、それ故に制限がなく迷います。アンビエントでもメロディラインを失わずにその曲なりにラインを入れたり。
今でも覚えていますが、リリース前のブラッシュアップ時は本当に夢にまで作っている音楽が出てきて、夢の中で作曲してました (しかも危険なシーンの曲w)
僕は夢をよく見るのでなおさらやばい状態でしたね。
ゲーム音楽の評価
自分にとって初めて担当した作品ですし、やっぱり表現者としてBGMの評価は気になると言うのが本音ではあります。
BGMってなかなかレビューでも言及されることって無いのですが、コミュニティ内、レビュー上で音楽がよかったと言ってくださった方が何人かいて本当に嬉しかったですね。
特に「海外の方にも、自分が作った音楽が伝わった」と言うのが本当に嬉しい。
ゲーム音楽はゲームありき、で奥が深いのですが、数ある中、数曲でも気に入ってもらえたら嬉しいですね。
曲はディレクションする人の好みで決まるので、音楽がしゃしゃり出すぎてる、とか、声があるのにメロディが強すぎる、とか、ユーザー側からすれば各々で色々あると思うんです。
逆に、雰囲気を出すことに徹底する、と言うあまり、何のゲームで流しても一緒、みたいな無難なリスニングミュージックになってしまうこともあると思います。
それは逆にいえば万能的である、とも言えるのですが、どちらも正しいし、伝える側がどうしたいか、だったりするので、運任せともいえます。
BCの依頼を受けた時、3年前に作られたキックスターター用のデモ版をプレイして、そこで流れていたBGMを何度も聴いてました。
どうしてもデモに当てられていた曲を聴くと、それはまず選ばれてデモに当てられているわけなので「こういうものが求められるのかな?」って保守的に考えてしまい、何が正解か分からず色々悩みましたね。
このデモ版のBGMに合わせた方がいいのか、僕なりに癖を出していっても良いのかなって。
ありがたいことに、当初はデモ当時から不足分のトラックを依頼されただけだったのが、とても気に入ってくださり、既存曲からほぼ全曲差し替えしたい、と言う流れに。
一緒にBGMを作った 錦 陽香 さんの楽曲も、僕には書けない優しい曲、アクティブな曲もあって「そうか、このシーンではこう言う曲が求められていたんだなぁ」と言う感じで勉強になりました。
終わりに
早いもので「ブラッディ・クロニクルズ」関わってから一年が経ちますが、最初から携わっているスタッフの方たちはそれ以上に人生を捧げているわけなので、思い入れが尋常ではないはずです。
「1つの作品をチームで作り、達成する」
ゲームの音楽を作ることが夢だったので、このような素敵な作品に携わることが出来て本当に幸せです。
作ったものに満足せずに、もっとゲームサウンドを追求したいですね。
近々同チームのクミホソフト様より「War of Ashird」に関する発表もあるようなので、こちらもチェックです。
機会があれば、自分でもどんな気持ちで作っていたのかを振り返りたいので、サウンドトラックのライナーノーツみたいなことを書いてみたいな〜って思います。