Photo by davidsingam
2013年 (2012/12) から2015年の間に、ゲーム音楽をイメージして100曲以上曲を書きました。
コピーやカバー、アレンジ、即興演奏による曲も含めるとさらに増えますが、1曲目、2曲目の曲を書いている時と、50〜70曲あたりの時とでは考えていてることや、意識していることはやはり違ってきます。
自分なりに試行錯誤したり、何回も最初から通して聴いたり、余計なことをし過ぎてダメになったり、聴く人にとって違いのわからないような意味の薄いことに時間をかけたりと、本当に色々です。
恐らく、これからもまだまだそういったものが続いていくでしょう。
今日は、作曲を始めた頃の気持ちを振り返ってみました。
目次
欠かさずやっていること
ゲーム音楽を作るつもりで作曲しようとしてましたから、一番最初の曲から今でも欠かさずにやっていることがあります。
それは必ず「イメージした画面、動画を用意すること」です。
これは当初から欠かしたことがありません。
何かしら画像を見てイメージしながら曲を作ってきました。
資料の準備
上記の理由から
「RPG フィールド」「RPG 街」「ツクール」
などと言った、好きなゲームの固有名詞、画面で検索したりして、これだと思う画像、動画を端っこに表示させておきます。
でも最初の頃はなかなか元の曲のイメージも強く、自分の曲のクオリティも低く「マジで画面に合ってないなこの曲・・・」と一人で嘆いていました。
未だに画面にマッチしていないと思いますし、公式のゲームやツクールなどに当てはめてみても違和感はあります。自分の曲だからか、客観的に聴けないのです。
作曲者はみんなそんな感覚なのでしょうか? 自分の作ったものだから違和感がある、それが今でも続いています。
曲調なのか、雰囲気なのか、ミックスなのか、質感なのか。
特にミックスが怪しいんじゃないのかと何回も疑った時もあり、効果音の雰囲気も関係してくるのかなとか、リバーブはかなり切った方がゲーム画面っぽいのかな〜とか本当に色々と実験です。
最初の頃に意識していたこと
一番初めにゲーム音楽のつもりで作っていた曲はオープニングテーマでした。
いきなりオープニングです (笑)
なので構成、編曲、作曲も凝っていたりと 試行錯誤の連続でしたね。確かその曲だけで3週間くらいかかったと思います。
使用した音色は現在のマスターキーボード RD-700NX という Roland のステージピアノのプリセット音源で、普通に MTR に録音するみたいに手弾き録音していました。
演奏データのMIDI修正を一切しない前提でしたので、メトロノームを聴きながらバンドの曲みたいな感じでレコーディング、リズムがずれたらすぐやり直し、という感じでした。
実際にバンドでのキーボードのレコーディングはそんな感じだったのですが、生ピアノとかを録音するわけでもないのに、MIDI が使えるキーボードがわざわざギターを録音するみたいにやってるので、効率が悪いのは承知の上です。
ですが結果的にこれが良い修行になり、今ソフト音源で MIDI を使ってラクラクに作曲できています。間違えても修正できることが、こんなに素晴らしいとは、などと今更ながら思うわけですね。
人によっては MIDI からステップ入力だったりしますので、これも元々バンドをやっていて、キーボードプレイヤーだったから出た発想だったのだと思います。
コンセプトやテーマを定める
上記のように自分で縛りプレイ、制限を施したのですが、MIDI録音とオーディオ録音を併用しようとも途中で考えた時もありました。ですがあえて最後まで「ハードシンセのオーディオ録音だけでいこう」と決めてやってました。
その理由は、後から自分の音楽歴史を振り返る時に
「このアルバムは、こういうコンセプトで作った」
という制作経緯やテーマが欲しかったからです。
それは同時に、自分の中から次々と出てくる発想、アイデアをすべてを大事にしよう、または活かそうとし、それが結果的に完成させれない、構成できない、と言う呪縛から逃れる方法でした。
何かがダメでも、その理由がきちんとあれば意味はあるな、という発想転換でした。
つまり私はまず「完成させるという経験を持つ」という事を優先させました。そのためには、ソフト音源もたくさん使えたら音色に迷いが出る、MIDI で修正出来たら手弾きできないようなフレーズも入れたくなってしまう。
このように、手で弾ける内容を意識して曲を作った事によって「奏者になったつもりでフレーズを弾く」という癖も身につけました。それが良いか悪いかは別として。
今思えば、別にソフト音源を使おうが、修正できようが関係のない事だったのですが、当時の自分にとっては何か制限を施すことで選択肢を狭め、少しでも迷いを無くそうとしていたのです。
出来ることが多すぎる上に、アイデアだけは一丁前に次々に湧いてくるので収拾がつかなくなり、さらには曲を完成させてもいなかったので、それらのアイデアは悩みのタネでしかありませんでした。
制作期間を決めないとダメ
10曲くらいを超えてくると、私は自信がついてきたのか少し謙虚さみたいなものがなくなっていました。
友人に曲の相談をしていくうちに、
「こういうアイデアもあって、これも本当はやりたかったんだよねぇ」「こんなに作ったのに、これも全部やり直し、時間かけたのになぁ」「最初はこういう風にも考えてたんだよ、やっぱり難しいよねぇ」「発想はまだまだあるんだけど」
このような「こんなに俺、考えてるんだぜ」みたいな話を聞かせ始めます。
つまり、自分のアイデアや考えていたことを形にせずして武勇伝のように語りたがる時期です。自分から相談しているくせに、何か自分にとって都合の悪いアドバイスをされたらこのように跳ね返しているのです。最悪です。
そういった話は大抵いつまでも終わることがないので、聞いている方からすると
「マジでそんなことはどうでもいいんだよ」
となります。
「そんな実際に形にしていないことや、出来るかどうか分からんことはどうでもいいんだよ。お前はいつまでにこれを作るんだ、今決めろよ」
私はしばらく黙りこんでしまい、冷静に考えました。
そこで目が覚めて、制作期間、時間を決めてないことが、次々に出てくるアイデアを全て生かそうとしたり、また生かせないから語ろうとしたりしてしまうんだな、と反省しました。想像だけなら、イメージして仮説を語るだけなら本当に簡単です。
しかも時間が無限だから、いつまでもどうでも良いことで悩んでしまうのです。
手の動きが止まり、想像、脳内完結だけで
「自分の頭の中ではこんな風になっている」
それをイメージだけして満足してしまうクセがついてしまいました。厄介です。
それが結果的に「語る」という行為に置き換えられ、最初に作った10曲で曲が作れるようになったことを証明しているからと調子に乗り、イメージで脳内完結を語りたがるようになってしまいます。
それは他人からしたら
「あの曲はあの曲だろ。完成していない曲は絵空事と同じだ」
いくら別の曲を作っても、今話している曲を形にしていなければ作れていないのと同じことです。
それをさも
「いや、頭の中では完成しているんだけどね」
という言い訳をするようになります。
ファンタジーの空想
最初は「ゲーム音楽をイメージした、ファンタジーRPGアルバム」みたいなコンセプトから考え始めました。
このようにアルバムの世界観をイメージした地図らしきものを描き、セピアっぽい色で編集してニヤニヤ妄想してました。
それが10曲くらい出来たら
「30曲のRPGのゲーム内容に沿ったアルバムにしよう」とか調子に乗ってハードルを上げ出す自分がいました。
つまり後20曲もあるわけです。
残り20曲の曲が流れる場面、曲名のイメージだけはしっかり考えてありました。
ダンジョン、ボス1、ボス2、終盤の街、通常戦闘2、港町、貿易都市、タイトル画面の曲、後半に流れるフィールド曲など
このように次々と調子に乗って空想世界をイメージし始めます。
ひとまず短い仮想トラックを作り iTunes に入れ、曲名だけは考えておきます。そしてデモが出来た曲から少しずつすり替えていき、最終的には実際に20曲デモを作りました。
デモといってもリズムはずれているわ、不協和音だわ、部分部分しかダメだわで、脳内完結している自分にしか聴いてられないようなデモです。
文字通り、デモという名の曲のメモです。
ただ、曲調、雰囲気だけはハッキリしているので、あとはフレーズを修正して、練習して打ち込むだけです。しかしそれが仇となり、いつまでも完成していない曲に関しては、上記のような絵空事を語ることにつながってしまうのですね。
仮の曲名を決めたらデモを作り、出来たら次々と iTunes のプレイリストに放り込みます。
「あとはやるだけ」
ならやれよ、という話なのですが、
「実はこういうのもやりたいし、これも考えてるんだよね」以下無限ループ
2曲目〜10曲目までは本当に勢いがありました。そのうち無理やり完成したことにしていた出来のよくない曲を削除し始めます。消しては作り消しては作り・・・13曲くらいからなかなか進みません。
完全にスランプ状態でした。
しかし結果的に今思い返してみれば、スランプというか、本当にただ自分でハードルを上げすぎてるだけのバカな行為だったなと反省しています。
最初からそんな大作が作れるはずもないのです。
重要なのは完成させること
17曲くらい完成しました。あと13曲あります。
私は少し飽き始めていました。良く言えば一つの作品に対して注ぎ込める集中力が切れ始めていたのです。2013年 (2012年/12) から始めて一年以上は経過していましたから2014年になっていました。
上記の録音方法による縛りプレイで、録音に時間がかかり過ぎていることもあり、早くソフト音源のMIDI入力を使った録音方法で、新しいコンセプトで、また違ったテーマで曲を作りたいと思い始めていました。
そのプロジェクトが「音楽素材サイト用の曲」になります。
このままでは終わらせれない。
そこで、いくつか曲を削ろうと思い立ち、残り5曲にしてなんとか再構成して作り切ろうと切り替えました。
ダンジョン曲、中ボス、ラスボスの曲、壮大な10分くらいある (脳内は) エンディング、スタッフロール曲、など
消えた曲はかなりあり、結果的には当初思い描いていたものとは違う構成のアルバムになりました。
それでも一応はエンディングのような曲も作り、「とにかく終わらせる」ということを目標に一応は完成します。22曲でした。
DECISION
そしてこの頃、オーディオインターフェースが外部録音を認識しなくなり、ハードシンセの録音が出来ない状態になりました。
ソフト音源は普通に鳴るのでドライバーの問題だと思いますが、色々調べても該当する情報が出てこなく、丁度良いなと思い RD-700NX を使った手弾き録音を終わらせることになります。この音色でなければこの質感は出ないので、このアルバムはこれで完成にしよう、となりました。
ここで得たことは
「作品の完成に必要なのは根気ももちろんだが、期間を定めた全力投球するスピード感のある集中力も必要だな」
新鮮な発想や集中力というものがいかに大事な要素だと痛感します。つまり制作期間をまず決めること。
これで自分がただ聴きたい、自分の為に曲を作る、というコンセプトに終焉を迎え、今度は「誰かに使ってもらいたい」「何かに使える曲にしたい」そんな曲を書きたい、と思い始め、音楽素材サイト用の曲制作に移ります。
成長の確認
当初作ったものと、去年作ったものを比べてみます。
作るものだけでなく、作り方も、構成の仕方も、管理も、使う音色も当初とは全く違います。本当にこの時にしかこの曲は作れなかったんだなと感じます。
OVERTURE -序曲-
目も当てられないようなこの頃の DAW 画面。
何百トラックだだくさに使ってるんですかという。文字通り、左から右へ勢いだけで録音して作っていった、というような軌跡。
Opening Theme -物語を紡ぐもの-
これだけです。リピートだから短いのもありますが、視覚的にもスッキリしています。
オープニング用というコンセプトは同じですが、前者はこねくり回し、結局3週間くらいかかりました。
後者は前者の制作よりも2年弱経って、ある程度の作編曲の力を付けてから1日で作ったものです。
使われる場面のイメージ、構成や編曲の凝り具合が違うので単純に同比較にはなりませんが、明らかに後者の方が短くて、ツボを押さえて完結していると思います。前者ももちろん自分が始めて最後まで全力で完成させたオリジナル曲なので気に入っています。
前者「ワイの初舞台の曲やし言いたいことがとにかく沢山あるんや」
後者「この画面で言いたいことはこれだけや、これで十分伝わるやろ?」
当初、自分がどんな部分にいつまでも時間をかけていて、どこに手こずっていたのかが今なら分かります。でも今ではその無駄だと思えることは、当初は必要なことだったのです。
最後に
当時を振り返り改めて思うのは、やはり「今の技術で作り直したいな」という気持ちです。新しく買ったソフト音源、得た技術、今の発想での編曲など、試したいことが色々あります。
ですが、作り直したい、と思っているだけでは形としてある今の音源が自分の実力という話になってしまいます。
「どれだけレベルアップした自分の曲が脳内で鳴っていても、形にしていなければまだ絵空事」
制作期間を決めないとどんどん壮大なものにしようと収拾がつかなくなります。
その主たる理由は、作業を進めるうちに自分に力が付いてくる事に起因します。もっと良くしよう、また同時に新たなアイデアも浮かんで来るので、取り入れればさらに良くなるだろう、このようにどんどん欲が出てくるからです。
そしてやがては、今出来ているものにそれらを組み込もうとする事でさらに制作のハードルを上げてしまい、そこで制作期間を設けていなければ永遠に良いものを追い求め、悩まなくて良い部分で悩み、いつまでたっても完成させれない状態に陥ります。
一つずつ好きなものを好きな時に、好きな時間をかけて作るのも良いですが、今回のような何かまとまったプロジェクトであれば、やはり「制作期間を設けること」をオススメします。