「RPGで盛り上がるボスバトル曲を作りたい」
バトルの作曲方法はバンドサウンドのようなものから、オーケストラっぽいものまで幅広くあります。
今回は、今作ってるオリジナルゲーム用の通常バトル、ボスバトル曲、この2点を使って作曲に使えるアレンジ方法を紹介します。
その名も
「通常バトルのメロディ(モチーフ)を使ってアレンジする、ボスバトル曲」
RPGにおいて、1つのテーマを複数曲に忍ばせる手法はよくあります。
ゲーム中の「〜のテーマ」など、ある曲のメロディ(モチーフ)を別の曲で使用してアレンジする方法です。
目次
- 「通常バトルのメロディ」を使ってアレンジする
- 各バトルの聴き比べ
- アレンジのコツ①「キーを変更する」こと
- アレンジのコツ②「ベースアレンジ」
- いつも心がけていること
- (補足) 実は他にもテーマを使ってる
- 終わりに
「通常バトルのメロディ」を使ってアレンジする
ボス戦を作る時にまず意識したいことは
「通常バトルやメインテーマをモチーフにするかどうか」
代表的なRPGで言うと、ファイナルファンタジーやクロノ・トリガーなどはボスバトルに限らず、様々なシーンの曲でよく使われてます。
以下に紹介するような曲でも、通常バトル、ボスバトル、ゲームのメインテーマのメロディを使ってアレンジしているパターンは何気に多いです。
例えばENIXのミスティックアークのラスボスはメインテーマを入れてますし、ファイナルファンタジー5のエクスデス戦はボスバトルのテーマがアレンジされています。
再生時間を直前で調整してあります。
メインテーマ
ラスボス
ボスバトル
エクスデス戦
曲単体で聴いても相当に素晴らしいのですが、 このアレンジに気が付いた時はすごく感動します。
こう言うアレンジの目的ですが、
「ゲーム内での音楽同士の結びつきを強化することで、各曲に深みを持たせる」
もちろん全く関連性を意識せずに、曲をバッサリ切り替えて作るのも全然オッケーなんですが、やはりメロディを一部使用して絡ませるとゲキ熱。
理想はプレイヤーが「自分からそれに気づくこと」ですね。
各バトルの聴き比べ
冒頭でも触れた通り、今回は以前作っていた通常バトル曲のメロディをアレンジしてボス戦を作りました。
こちらが、今回のボスバトル曲で応用しているメロディになります。
通常バトルのメロディを一音下げにしたものにし、後半をアレンジしてます。
リズムだけでも何となく目で追いながら、流して聴いてもらえると何となく「あ、確かに同じフレーズだ」と気づくと思います。
自作曲で恐縮ですが、お聴きください。
「↑」この曲のメロディを使って「↓」この曲にします。
なんとなく意図しているアレンジが伝わりますでしょうか?
アレンジのコツ①「キーを変更する」こと
同じテーマ、メロディを応用するときに注意したいことは
「同じキー(調性)で曲を作らないこと」
ただでさえフレーズが同じなので、キーも同じにしてしまうと似てしまいます。
あえて遠ざけつつも、実は同じだった、と言う似せ方がジワジワ来るのでなるべくキーは一音前後は離したいです。
今回の曲では
通常バトルのキーは「Em」
ボスバトルは「Dm」
通常バトルに対して「1音下げ」で作ってます。
理由は「重厚感を出すため」になります。
それぞれの雰囲気を見ていくと、ザコ戦は明るい感じで、ボス戦は暗い雰囲気。
基本的には、キーを下げると音程が下がるので曲の印象が暗くなります。
ボス戦は緊迫した空気が必要なので、このアイデアはピッタリなのです。
もちろん、キーを変えることだけで曲の雰囲気を重くしているわけではなく、リズムやベースラインなども影響していきます。
アレンジのコツ②「ベースアレンジ」
通常バトルもベースのリフが特徴なのですが、展開の多いボス戦においてはかなり重要な役割を担っています。
通常バトル
ボスバトル
通常バトルでは、休符を利用したトリッキーなリフに対し
ボスバトルでは、ストレートな刻みでドライブ感を出しています。
(僕自身、ボス戦では熱いハードロックなアレンジで盛り上げたかったからです)
他にもベースで起こしている変化は
- リフを変えることで、「同じDmでも違いを出す」青セクション、黄色セクション
- 前半は8分ストローク刻みで「かっこいいドライブ感を出す」青セクション
- ベースを入れないことで「緊迫感を出す」紫セクション
- 抜いて再度インしてきたときの「差を利用する」紫セクション
- アルペジオでコード感を出しつつも「アクセントをずらす」紫セクション、赤セクション
ドラムはあまり変わってなかったりしますが、
ベースを変えることでプレイヤーに感じさせるノリをコントロールしていきます。
もちろん、ベースだけで変化を出すのは難しいので、他のパートのもつアクセントを利用して補強していきます。
いつも心がけていること
ドラムの8ビートに絡む、全てのフレーズですが、
キックの位置
スネアの位置
この2つはとても重要で、この2つを生かすようにフレーズを構成することが大事だと思っています。
というのも、ドラムというのは細かい装飾はさておき、基本的なパターンがほぼ決まっているので、その8ビートをかっこよく聴かせるためには、ドラムパート以外のアレンジにかかってます。
ドラマーで作曲してる人はドラム曲の打ち込みはもちろん、リズムのかっこよさをあっさりクリアしている人が多いのですが、 僕はかなり苦労してるタイプです。
また先ほどのベースの話とも被りますが、ベースの音の長さ、ベロシティが適当だとカッコよく聴こえない傾向があります。
最近ようやくコツを掴めてきたと言う感じですね。
(補足) 実は他にもテーマを使ってる
ボスバトルの構成ですが、各セクションをカラーで分けてます。
ループ前に差し掛かるクライマックス、1:10〜から流れる赤セクションのメロディも、一瞬だけ先ほどのメロディを一瞬で出しで使っています。
ここで狙った効果は
「コード進行時に使うことでさらに深みを持たせること」
バトル曲は暗いので、既存のどの曲もマイナーになっているはずです。
マイナーコードダイアトニックを見ていくと、
Im, IIm-5, III, IVm, Vm, VI, VII
Dm,Em-5,F,Gm,Am,Bb,C
となっています。
実はイントロと赤セクションを覗くセクションは、全て「Dm」をキープしてる状態であり、前半はあくまでその中でのモチーフの応用。
バトル曲のラストを盛り上げる赤セクションですが、ここは「Bb→C」と唯一コード進行になっています。ディグリーで言うところの「VI→VII」の流れですね。
Dm一発時(青、黄色セクション)に使用していた時とは違う雰囲気を、Bb、C時(赤セクション)にもう一度メジャーコード進行時で登場させることで、深みを出していきます。
(まぁ、あくまで僕が深いと思ってるだけですが・・・)
こんな感じで、通常バトルのメロディだとわかる部分をワンフレーズだけ使って、他のトラックの雰囲気は別のもので構成します。
終わりに
今回は「メロディのモチーフを応用したアレンジ」について書いてみました。
既存曲にも言えることですが、コツとしては
「ワンフレーズを一瞬だけ入れること」
「あれ、これ良く聴いたら・・・」くらいがベストですね。
(すいません、僕は今回ハッキリ言ってわかりやすく入れ過ぎてしまってます)
SFC音源の特徴は「ゲームらしいサウンドになる」という部分だと思いますが、僕にとっては「ゲームらしいバトル曲とは何だろう?」と言う追求しがいのあるテーマでもあります。
バンド系サウンドか、オーケストラ系でいくのかで雰囲気の出し方が変わりますね。
ゲームミュージックを作るときの参考になれば幸いです。