ゲーム音楽の巣

フリー音楽素材サイト「音の園」の管理者及び作曲者。このブログではキーボーディスト、ゲームミュージックの作曲を中心に音楽雑記を書いています。健康第一。

【作曲】楽曲の『音色』に対するイメージ『既成概念』について改めて考えてみる

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作曲という行為は不思議なもので、どうやって曲を生み出すのかを疑問に持つ人が私の周りでも結構います。

多分頭では色々考えていると思うのですが、自分の感覚では意識して考えずにやってる過程が結構あるんですね。

俗にいう「ここは感覚で処理している」という部分。

それをセンスとか何とかって呼んだりする人もいるかもしれませんが、では具体的に何を考えているのでしょうか?

色々ある中でも、今日は「音色」について言語化してみたいと思います。

(本記事における曲とは歌モノではなく「BGM」とします)

目次

はじめに

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BGM を作る時、曲が使われる場面や世界観をイメージします。

次に私が考えることはズバリ「メロディやフレーズ」 と言いたいのですが・・・実は違うんですね。

その前に「どんな音色にしようか」または、どの音色から「曲作りのキッカケ」を得ようか、と瞬時に考えてます。

私はピアノが主楽器なので、ピアノの音色からテーマを考えることも多いですが、それでも「ピアノで考えよう」と先に音色を無意識に決めています。

私は曲を作る (考える) ときに、何の楽器がメインで鳴っているのか、を大事に思っていて、それと連動してメロディ、フレーズをひねり出すことが多いです。

音色の答え合わせ

アレンジによって後から音色の変更は可能ですが、最初のイメージではどんな楽器が鳴っているのか、そんな自分自身の想像力を私は大切にしています。

そこを最初に決めていないと、途中で色々と音色をすり替えたり実験しているうちにブレてしまうからです。

最初からぱっぱと頭で想像した通りになれば良いのですが、実際には音を重ねたときに、イメージ通りにならない場合が多いんですよね。

あくまで想像との答え合わせなので、違っていたら音色を変えます。

変えた音色でも最初に自分が思っていたイメージが出せそうであれば問題ありませんが、そうでない場合は注意が必要です。

その曲はその変えた音色でもいい感じだけど、最初に作ろうとしてた雰囲気と違う曲になってる、こういう事って結構多いんですね。

今でもたまにありますし、作曲を始めたばかりの時期なんてしょっちゅうでした。

きちんと決めて狙った感じの雰囲気を出したい場合ちょっと要注意ですね。

でも、同カテゴリーの音色のすり替えは当然ですがよく行いますね。

どんな聴き方をされているのか?

オーケストラであれば、一曲で様々な楽器が活躍すると思いますが、方向性を特に指定しなければ、メインはだいたいストリングスやブラスになる場合が多いかもしれません。

ティンパニやスネアが常に普通に鳴っていたとしても、メインではなかったり。

編成の規模にもよりますが、曲の印象としてメインになってくるのは、やはりメロディ楽器になってくると思います。

「この曲はヴァイオリンで弾く為にあるような曲」

そのメロディやフレーズが似合う楽器や音色があり、それが曲のイメージ、印象を決定する場合もあります。

(メロディが良ければどの楽器で弾いてもそれぞれの良さは出ると思います)

サブパートの楽器が陰ながら曲に多大な貢献をしていることは十分に承知していますが、それを理論的に理解できるのは音楽に詳しい楽器経験者や作曲をやっている人が大半な気がします。

一般の視聴者はそこまで細かく聴いていませんし、そういう聴き方をしていないことが多いと思います。というかできないと思いますし、それが普通です。

実際、作曲してる私自身も映画を見てて、意識してなければ音楽という情報は感覚で聴いて処理しています。それは違和感がないから、だと思います。

違和感がない=存在感がない、というわけではなく、違和感を感じさせないことがまず「プロっぽい」ってことなのかなぁと思ってます。

それをクリアしてようやく主張する場面は主張する、というものなのかと。

それはどの分野でも同じで、音楽に限ったことではありません。

音色で曲の印象が決まる

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なぜ楽器が大事か?

それは楽器も大事ですが、重要なのは楽器の持つ「音色が大事」なのです。

音色は楽器によって違います。そして、その楽器の音色でしか出せない表現、言葉に出来ないニュアンス、表情があります。

人の声も楽器と同じで一人一人声が違いますから、面白いし、同じ曲を歌っても、人、楽器によって全く表情が変わります。

ギリギリ音程が確認できる不快な音で演奏したら、いくらメロディが素晴らしくても、それを伝えることができません。

ひどい声の人 (例えばですが) が歌ったら、メロディが良くてもそれを引き出せません。

音色はメロディの印象をも決めるので大事だと思っています。

音色による既成概念が存在する

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各音色 (楽器) に対するイメージは、人それぞれの経験、体験によって決定しています。

それを「既成概念」と私は呼んでいますが、このブログでも何度か書いてきました。

「人の既成概念を利用して曲を書く」

すると共感、共有してもらえる確率が上がります。

バトルの曲は「激しい」「テンポが早い、遅い」「ハードなギターサウンド」「激しいドラム」などという一般的なイメージは、多くの先駆者、作品を通して体験しています。

なので、そのギター音色を選択し、バンド編成にし、テンポを速くする。

すると、出来はともかく「バトルを表現したいんだな」というのは伝わります。

改めて書くと不思議ですが、これらを無意識にしてることが多いのです。

ジャジーな感じなら、ピアノ、ウッドベース、ドラム、サックスなど。

それはジャズというジャンルを知っていて、それらを使えばそのような雰囲気が出せる、という既成概念があるから。

ということは、それは作り手だけではなく、聴く側にも通ずることだと思います。

その音色を選ぶ理由

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数ある中からその音色を選ぶわけですから、人によってその理由は必ずあります。

例えば、「哀愁が漂うような曲にしたい」と思っていたとして、自分なりに哀愁漂うメロディを考えること、は言うまでもありません。

では哀愁さを醸し出す音色は何だろう?

そうやって自分なりに過去の体験を通して、自分をノスタルジーにさせてくれた曲の要素、構成を思い出したりします。

音色はなんだったか

リズムは何拍子だったか

テンポはどのくらいだったか

どんな温度だったか

ヴァイオリンだったかな、ピアノかな。ピアノだけど高音じゃなくて中域で弾くような感じだったかな、など色々あると思います。

これに加えて、展開、他の楽器とのバランス、メロディなどが影響してきます。

「色」から考えてますか?

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曲のカラー、とか言ってしまうと何だかアッサリしていますが、曲に対するイメージの一つとして「色 (カラー)」があると思います。

また、曲によっては「色の比率」も当然あり、「青:8水色:1白:1」のように、海のイメージで青なんだけど、その他の色も多少ある、というような感じです。

私はよく絵を描く時に、テーマに対してそんなイメージで描いてました。

実際の色をそのまま描くのではなく、あえてカラーリングを決めてその範囲内で明暗をつける。

それが作品全体を通しての場合もありますし、一曲毎の場合もあると思います。

「ファンタジーRPGの街、緑や自然が多い街なら青や緑だけど、建造物が古代っぽくて神秘的だからちょっとグレー、アイボリー寄りかな」

「機械がメインの世界観だから、街なんだけど、鋼色、金属的なイメージだからシルバー、ブラック寄りかな」

など、濃度や明暗が分かれてくると思います。

そういったものを、メロディから表現するのはなかなか難しいと思いますが、音色や楽器からなら表現しやすいかなぁと思います。

例えば、色とは違う視点でのイメージ

「お城ならオーケストラ、マーチ、チェンバロ、ラッパのイメージ」

「森ならふわふわしたパッド系、アンビエントな残響ピアノ」

「広大なフィールドならオーケストラのストリングスやフルート、ハープ」

このようなイメージ。

こういったイメージは、どこからきたのでしょうか? 答えは自分が過去に体験した作品の数々。

曲のイメージを想像するにあたってはどちらの考え方も面白いと思います。

自分にあった作り方でもいいと思いますし、私も両方ともよくイメージします。

前向きに考えて、曲を作り出すイメージ、伝える手段は多いほうがいいですね。

どうやって曲を思い出すのか?

よく曲を思い出す時の一つの例として

「あのヴァイオリンの曲」とか「あのピアノの曲」

など、そういう覚え方、記憶の辿り方、ってあると思うんです。

これは楽器に関して知見がある人の覚え方ですが、作品の中で楽器への関心度がそこまでない人なら「あのシーンで流れてた曲」といった印象で覚えているパターンもあります。

記憶へアクセスする方法は、その人の知識や経験、体験した時に感じた印象によって全く異なるので不思議なものです。

全ては「何のための曲なのか」

BGMってやっぱり関心がなければそこまで詳しく聴いてるわけではありませんから、分かりやすさ、王道感がある方が共感してもらえます。

(ターゲットの指定を言い出したら作品そのものまで関わるのでここでは割合しますが)

共感する、というのは「理解できたから」であり、つまり「この作品、その場面、その音楽で合ってるよ、うん」ってことです。

場面にマッチする曲を作るのは、音圧や雰囲気も含めてそれだけ難しいので、最初から個性だとか言ってると本当に画面に合わないと痛感しています。

私も、まずは王道でしっかり安定したものを作れるかどうか、がまず目標。

その中でもやはり「音色が占める情報」というのはかなり大きいと考えています。

ここまで色々書きましたが、曲は印象的に書くことが全てではありませんし、そういう曲と、そうでない曲を作品の中でバランスよく散りばめるのも大事だと思います。

あくまで、「何のために作られた曲なのか」が大事。

それが決まってないと、曲に対して音色に対して議論する余地もないからです。

最後に

今回書いたことは、作曲してたら言うまでもないようなことだったりします。

書き出してみると不思議な感じですね。

音楽の作り方に正解や決まったやり方は存在しませんから、今回の方法もあくまで一つの主観に過ぎません。

曲によってはリフから作る場合もありますし、メロディを最後に作る場合もあります。

でも、そのきっかけはやはり「音色」が大きいと思っています。

「音色の持つ力」

想像力を刺激するような音色をいかに手元に多く置いておけるか、それによって表現できることが違ってくるので、創作意欲にも影響を与えるのです。

これが新しい音源を次々追い求めてしまう一つの理由であったりします。

やはり自分が気に入った音を見つけると、長く使えるのでそれに創作意欲が左右されるのはあります。

色々な音源を買ったからには元を取るつもりで、アウトプットしていきたいですね。