http://arigato-ipod.com/2011/05/aen-no-hakobune.html
今回は推理系や探偵ゲームの捜査、聞き込みなどの場面をイメージしました。
このような場面の音楽はゲームの世界観によっても色々なスタイルがありますが、最初からホラーな状況であったり、閉鎖的な場面からスタートしない限りは大抵ノリノリでアップテンポな BGM だったりします。
今回はそれとは真逆で、クールでアンビエントなテイストで曲を作ってみました。
目次
まずは完成バージョンを試聴
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少し不気味な洋館? のような雰囲気で、メイドさんのにっこりした表情と暗い背景の差に少し違和感を覚えます。
ディスクシステムの「ファミコン探偵倶楽部」のような場面ですね。
この画像だけで判断すると洋館なので、バロック音楽のような曲調でも良かったかもしれませんが、汎用性のある曲調を目指したかったのでこのような感じです。
今回のイメージは序盤ではなく、少し話が進んで何人かが殺されてしまい、中盤で各登場人物の言っていることが矛盾し始めている、またはその手前的な・・・。
そんな怪しくて涼しげだけどどこか怖くて不気味の中で捜査していく、、、というイメージを妄想しながら作っていました。(どんな妄想)
(あくまで作曲の画像資料としての妄想ですので、上記画像の 「亜鉛の匣舟」のゲーム内容とは一切関係ありません)
一方でこちらの画像も少し参考にしました。
https://www.youtube.com/watch?v=Xzr7yMYovGo
(ファミコン探偵倶楽部2 -うしろに立つ少女-より)
共通しているのは、何か手がかりを探すために探し物をしている、話を聞いたりして捜査している場面という感じですね。あとは、少し真相に近づきつつあるようなイメージです。なんというか、不気味な清々しさ、爽やかな怖さ、を演出したいという感じでしょうか。
同じ画面でも、状況によっては流れる音楽も変化すると思いますが、今回はそんなイメージです。
作曲過程
先日購入した Spectrasonics の「Omnisphere 2」のプリセット音源を使用して4トラックで曲を作ってみました。
今回は Omnisphere 2 のレビューも少し兼ねながら、「ピアノ」に「ディレイ」をかけた作曲例も紹介したいと思います。
ディレイとは?
「ディレイ」は 遅延 という意味で、音楽で例えると一つ目の音が鳴った後に、少し遅れてから同じ音がまた鳴るイメージですね。遅れる音の時間や、鳴るリズムなども設定できます。
今回作った曲のピアノのフレーズを例に聴いてみてください。
ディレイ (無し)
ディレイ (有り)
Stereo Delay
今回使ったのは Logic Pro の「Stereo Delay」 というエフェクターです。
2分、4分、8分、16分音符と Groove というパラメータをいじると、タイム感を変化させることができます。左右とも同じ音符にするとお利口さんな感じのリズムになってしまうのか、下記のように、左は4分、右は8分と左右異なるように最初から設定してあります。自分の出したいイメージに近づけましょう。
リバーブと同時に使用すると自然な音色に仕上がります。奥行きと空間が出るのでアンビエント系の曲にピッタリな組み合わせです。
ディレイ (有り+リバーブ)
今回使用しているリバーブはこちら↓
上記の「Space Designer」は Logic Pro に付属しているリバーブの中でも、一番アンビエンスが強いリバーブです。かなり強烈なので調整が難しいのですが、個人的に効果がイメージしやすくて気に入っています。
4トラックで作成
トラック数が少ない事が良いか悪いかはさておき、最低限の音で作ってみました。ピアノは低音で使用しているだけなので、3トラックでもいけない事もないですが・・・低音の鳴り方は拘りたいので分けています。
- シンセ (コード)
- ビブラフォン (アルペジオ)
- ピアノ (メロディ)
Vibraphone
ビブラフォンのシーケンスパターンで無機質な雰囲気を作っていきます。
アクセントの位置を決めて、コード感を出していきますが、今回はコード進行に沿った分散ではなく、キー全体で繰り返し使える音を分散させます。
Ensemble
少し音が硬いので、今回は「Ensemble」というモジュレーションを使って、音質を維持する程度に少し変調をかけてみます。
LFO というパラメータをいじりますが、少しかけたいだけなので Random の Intensity を 30% 程度にしてから Mix を少しずつ上げていき調整していきます。
LFO1、2 は初期設定のままにしてあります。個人的には Random が手っ取りて早くてオススメです。というか、最終的に音重ねると違いがわからないので・・・。
Rate を上げすぎると Intensity を少し上げただけでかかりすぎるので、普通にかける程度であれば上記くらいがベストなのではないかと思います。
少し音がまろやかになったと思います。ビブラフォンやマレット系の音色はこういうアルペジオのパターンを使うと雰囲気が作りやすいです。また、打鍵から音が減衰するまでが早いので、早いアルペジオにも向いている音色です。
Glass Bender Fifths
なんかすごい音源なので、期待が寄せられそうですがプリセットから選んだだけです (笑) 適正な音色を探し当てれば十分だと思っています。探すだけでめちゃくちゃ大変だと思いますが・・・・多分音作り出したらキリないんじゃないかなぁ・・・というわけで、Glass Bneder Fifths という音色をチョイス。
初期設定では、1音弾くだけで1オクターブ下の倍音 (レンジは変更可能)、さらに Fifth という名の通り、5度がうっすら加わっています。それが結構曲に個性を与えていると思います。
普通に音を弄って弾いている分には面白いのですが、大抵少しでもパラメータを変えると曲に合わないので遊んでいる場合ではありません。
オートメーション
セクションによって前に出したい音が違うので、オートメーション (今回は音量変化) を書きます。ピアノはベロシティ調整 (弾く強さ) だけで十分なので、全音符のシンセとシーケンスパターンのビブラフォンの2トラックのみ書きます。
こんな感じになりました。リピートさせて3回目頭でフェードアウトです。今回の曲調では、曲始まりでいきなり音が鳴ると雰囲気が出ないのでフェードインしています。
では、オートメーションを書く前と書いた後で比べてみましょう。
オートメーションなし
オートメーションあり
オートメーションを使う理由は様々ですが、例えば各トラックのフレーズが同じ音域で被る時など、どの音を聴かせたいのかでメリハリをつけていきます。全て同じだとそこだけ音が密集してしまったりして、意図したような聴こえ方にならない場合があります。
おまけ
シンセ音色の Glass Bender Fifths の倍音を2オクターブ下に変更してみました。
少し厳かになって、状況に変化があったり、聖域や神聖な森、海底、禁忌な研究施設のような雰囲気にも聴こえます・・・。たったこれだけの変更で結構イメージが変わるので作曲は本当に面白いですね。
(何かもはや元の曲もそんな感じに聴こえてしまってきましたが・・・聴いている方はどんなイメージを持たれるのか気になります)
最後に
というわけで、Omnisphere 2 の音色を使って、探偵、推理ゲームの場面をイメージした例でした。ちょっと神聖な場面にも使えそうです。
今回4トラックでの製作でしたが、割とファミコンの曲のような作り方をしてみました。ピアノの低音はさておき、3トラックあれば表現できそうな内容です。
これがおそらく曲として表現する上で最低限のトラック数となり、ここから曲を壊さない程度に、細かい音や聴こえないレベルの音を加えたりしてプロっぽくしていくのが理想なのかもしれませんね。
でもそれは画面とリンクしてくると思いますので、ゴージャスにしても画面がシンプルであればそれらが不要な音になる可能性もあるかもしれません。
音を追加していくにも、心地よく、気持ち良く聴こえるようにすることが理想なので、やはり金物など、音そのものも含めフレージングでリズムを補強するような加え方をしてきたいものです。
次回はベース音源の Trilian を用いて今回のような場面、状況とは別に「序盤で泥臭く捜査しているジャジーなイメージ」で作ってみようと思います。