Photo by Minimoog | wire to the ear
前回ではデジタルシンセについて簡単にお話しました。
今回はアナログシンセサイザーについて、その特徴と魅力をザックリと紹介したいと思います。
目次
アナログシンセの音
アナログシンセサイザーの音 (波形) はとてもシンプルで、PCM音源のような楽器のような音は鳴りません。
基本的には「ブー」「ピー」「ポー」といった音が鳴ります。
これらの音は「ノコギリ波、パルス波 (矩形波)、三角波 (疑似)、サイン波、ノイズ」といったシンプルな波形から作られています。
ファミコン音楽で音をイメージしてみる
みなさんの一番身近にある音と言えば「ファミコンの音」がイメージしやすいでしょうか? ファミコン音楽はアナログシンセで使われる基本的な波形、音で作られています。
主には「三角波 (疑似)、パルス波 (矩形波)、ノイズ」などが中心で
役割的には
- 疑似三角波=ベース音
- 矩形波=メロディ、ハーモニー、効果音
- ノイズ=リズム、効果音
これらに利用されています。
こちらは「ドラクエのピアノ演奏動画」や「JR東日本の発車メロディの演奏動画」などで有名な「マツケン先生」率いる「NES BAND」と呼ばれるファミコンミュージックの再現を目指している知る人ぞ知るバンドです。
ゲーム音楽好きとしては、初めてこの動画を見たときの感動は忘れられません。
この動画ではファミリーコンピュータ用ソフトで大人気である「ドラゴンクエスト3」の音楽をファミコン音源で再現しています。
それぞれ「疑似三角波、パルス波 (矩形波)、ノイズ」といった、実際のファミコン音楽で適用されている構成音を各パート4人が担当しています。
左から順に、ノイズ、疑似三角波、パルス波、パルス波となっています。
役割としては、左から「リズム」「ベース」「ハーモニー」「メロディ」といった具合です。
- 一番左の人は、padKONTROL というMIDIコントローラを使って、このパッドに色々なノイズ音をアサインし、例えばこの動画では街の外に出る時の「ザッザッザッザ」といった音など弾いていますね。この動画では少し出番が少ないですが、他にもロックマンシリーズの演奏など大活躍していますよ。
- 左から二番目の人は基本ベースですが、村の曲では高音でメロディを担当したりしています。この疑似三角波の音は、ファミコンらしさを一番象徴する音ではないでしょうか? 動画によってはかなり難しいことをしています。
- 赤いシンセのマツケン先生 (リーダー) は絶対音感を持っているので、もっとも難しいパートであるハーモニーを中心に担当しています。覚えにくいハーモニーを全て暗譜しているのは見てるだけでカオスですね。
- 一番右の女の子はメロディを中心に弾いており、ラスボス曲などは手が空いたら音階を使って呪文の効果音などを再現したりしています。
これらの波形を使ったサンプルを少し紹介します。
【音量に注意願います】
それぞれの波形の音のイメージが伝わりましたでしょうか??
このライブ動画では質感なども完全なる再現を求めているため、アナログシンセではなく「MIDINES」というファミコン実機の音源を使用していますが、だいたいこの動画でアナログシンセの波形音の世界が分ったのではないかと思います。
話を戻しまして、
アナログシンセの基本的な素の音、波形では大体こんな感じの音が鳴ります。ここからつまみなどを弄って、エフェクターなどもかければさらに表現力は広がります。
デジタルシンセサイザーの【レイヤー機能】で、複数の音を組み合わせて自分だけの音を作ることも一つの音作りですが、基本的にはこれらのシンプルな波形 (音) を使って「全くの一から音色を作る」ということがアナログシンセサイザーの醍醐味と言えます。
前回の記事で紹介したワークステーションシンセは、PCM音源の膨大な波形やアナログシンセの基本波形を組み合わせて一から音を作ることはもちろん可能ですが、つまみやデザイン面などから操作性は少し困難です。
なので見た目のデザインや操作性、存在感からアナログシンセの方が良い、と思うキーボーディストも結構多いです。
このように機能の効率性、出来ることの多さや優劣だけで決められないのがシンセ選びの悩みです。デザインか機能か音か使いやすさか、あなたの所有欲を刺激するものは何でしょう?
モーグ・シンセサイザー
モーグはシンセサイザーの元祖的な存在で、生みの親である【ロバート・モーグ】氏が作ったシンセサイザーです。位置付け的には、ビンテージアナログシンセになります。
こちらの記事でも紹介した Minimoog Voyager はこのミニモーグの現行機種になります。ロバート・モーグ氏の最後の作品となったモデルです。
(昨年ついに生産完了となりました)
開発初期は、このようなサイズではなくタンスのような巨大なシンセサイザーでした。値段も高額で購入できる人間も台数も限定されたようです。
シンセの画像一覧
https://image.search.yahoo.co.jp/モーグ.search?
そして改良を重ねて持ち運びが可能となるサイズまで落とし込んだのがこのモデルです。【ミニモーグ】と呼ばれています。かわいいですよね?
Minimoog -ミニモーグ-
最近亡くなった EL&P というイギリスのプログレッシヴ・ロックバンドの「キース・エマーソン」というキーボーディストが、このモデルの前身である巨大なモジュラーシステムを愛用していました。
ロックにシンセサイザーであるモーグを取り入れ、シンセサイザーが音楽にもたらす可能性を提示した革命者です。個人的に大好きなアーテイストで、今でも亡くなった事が信じられません。ミニモーグの開発にも携わっていたようです。
Keith Emerson
https://ja.wikipedia.org/wiki/モーグ・シンセサイザー
バックに映っている何本ものケーブルで繋がれた巨大な物体がシンセです。
こちらの動画は彼の曲で有名な「Tarkus」という曲のライブ映像です。右手の二本が殆ど動いておらず、それでも右手の三本を中心に凄い演奏をしています。
少し長いですが、一通り見ていただければシンセサイザー、オルガン、ピアノといったキーボーディストの基本音色のテクニックを知る事ができると思います。ジャンルはプログレッシヴロックですが、あまりその辺は気にせずに見ていただけると嬉しいです。
こちらはビンテージアナログシンセの一つである ミニモーグ の演奏動画です。
ミニモーグの音がどんな音か知りたい方、シンセサイザーがどういったものか知りたい方はこちらの動画が参考になります。
前回の記事でも紹介した KORG M1 や、DX7ⅡD の動画でもおなじみ、シンセサイザーデモンストレーターで有名な氏家さんが解説しているので、とても分かりやすいですよ。アナログシンセサイザーが本来どんなもので、どんな風に音が作られていたのかが短い時間である程度分かると思います。また、音だけでなく「音色の変化、操作面」に注目していただけると、よりシンセ本来の演奏というものが知れると思います。
アナログシンセは、ある意味マスコット的存在
このようにアナログシンセは鍵盤の数は少ないし、操作も慣れるまで時間がかかりますが、とにかくデザインが通常のキーボードとは一線を画しているのが特徴です。そして最大の個性は「つまみをグリグリ回しながら音作りが出来る」ということに集約されます。
先ほどの動画を見てもらえると分かる通り、つまみを弄りながら音を変化させてフレーズを弾いていく、というパフォーマンス自体が全部ひっくるめて「演奏」と考えてよいでしょう。
このように色々と制約もあり、重いし超めんど〜なシンセですが、こういった個性的なシンセを持ってるだけでライブではヒーローですよ。特にシンセに詳しい人から絶対に声かけられます (笑)
なので【バンドの象徴、マスコット的存在】としてバンドに一台持っておくのも良いかもしれませんね。自分のキーボーディストとしての存在感、またはバンドのイメージをこのような個性的な機材を使う事で印象的にする、強調する、というアピールも時には必要かもしれません。私は個人的にそういう考え大好きなので (笑)
「あ、あのミニモーグ使ってるバンドね」といった印象を与えたいなど。
古いビンテージシンセに憧れている人へ
アナログシンセの項目でも少し触れましたが、基本的にはビンテージ製品 (古い昔の機材) になればなるほど扱いも難しく、室温や環境によっても音程が不安定であったり、また壊れた場合専用の部品が必要になるなど、専門家のメンテナンスが必要不可欠となりますので維持費もかかります。
また、状態が良いものを探そうとすれば、高額で複雑なシンセであるほど信頼できるショップから購入する必要もあるので入手経路も色々と限られてきます。
こちらは有名な「Five G」というシンセ専門のショップです。
国内のプロアマ問わず様々なミュージシャン、海外のアーティストなども日本に来たら立ち寄っています。色々なビンテージ製品、現行機種、カスタマイズもしているので興味があれば一度覗いてみてください。
というわけで、そういった価値観などもひっくるめて「このデザイン、音、手間、めんどくささが好きだ」というマニアックなレベルまで行かなければ手にする事はちょっと難しいかもそれません。
FIVE G ビンテージ取り扱い一覧 (2016年5月現在)
https://fiveg.net/?mode=cate&cbid=1833858&csid=0&sort=n
上記のビンテージシンセでなくとも、現行モデルでも色々と使いやすい製品がありますし、現行機種なだけあって動作も安定しています。
高校生や学生がバイトで買える値段のものも色々ありますので、もしアナログシンセにも興味があれば、まずは現行モデルを手にすると良いでしょう。
アナログモデリング・シンセサイザー
ビンテージ製品のアナログシンセサイザーは先ほど Minimoog の項目で紹介しました。
次に、今流行のビンテージアナログシンセをモデリングした「アナログモデリング・シンセサイザー」と呼ばれる機種を紹介します。デジタル制御の為、完全なビンテージには負けますがデジタルの利点を最大限に活かした製品です。
またパネルのレイアウトが、左から右へ順に音作りを行えるアナログシンセ特有のデザインになっていますので、本来の音作りの過程が分かりやすいと思います。
お手頃価格の Roland GAIA SH-01 などはアナログモデリングシンセの入門機としては人気があります。
また、その他にも個性派揃いのデザイン、カラーが特徴です。デザインだけでもすでに価値があると言っても良いでしょう。(いいすぎ?)
Roland GAIA SH-01
https://www.roland.com/products/gaia_sh-01/
NORD LEAD A1
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/194741/
Studio Logic Sledge
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/208579/
novation ULTRANOVA
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/158185/
アナログシンセサイザー
これらは現行機種の「アナログシンセサイザー」です。
KORG MS-20 mini
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/180962/
KORG minilogue
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/210438/
Dave Smith Instruments Prophet 12
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/184510/
MOOG SUB 37
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/202157/
Minimoog Voyager Performer Edition
https://www.electricroom.com.au/product/moog-minimoog-voyager-performer-edition/
最後に
今回と合わせて3記事に渡り、デジタルシンセとアナログシンセの大まかな特徴や、現行機種の代表枠のシンセサイザーを紹介してみました。広く浅くの紹介でしたが、なんとなくでもシンセの魅力が分かって頂けたら嬉しいですね。
私はリアルタイムでアナログやデジタルのシンセを見てきた世代ではないのですが、こうしてシンセの歴史を調べていくと、今の現行機種の凄さや、当時のシンセがなぜ今は「名器」などと呼ばれているのが良く分かりました。
紹介の仕方に偏りがあったと思いますが、各シンセの音の特徴などは、動画を見てもらえるのが一番伝わると思っています。
今回の記事でも紹介した動画のデモンストレーターの氏家さんは、色々なシンセを弾いてる動画を YOUTUBE に投稿していますので、それらを一通り見るだけでもシンセの事や演奏方法が色々と分かると思いますよ。
この動画シリーズはシンセマニアは要チェック!
それからこちらの書籍はシンセを徹底的に勉強したい方へ特にオススメです。
ぜひ時間があれば他の動画を見て、色々なシンセサイザーの特徴や魅力を知ってくださいね。分かりやすいので本当に参考になると思いますよ!