Photo by Joni.Maccheroni
最近キーボーディスト入門に向けたシリーズの記事を書いています。
前回は主にキーボーディストのバンドでの役割、音量バランスを中心にバンド演奏の注意点などを書きました。
今回より3記事に渡りシンセサイザーの特徴と種類をザックリと紹介したいと思います。少しでもシンセの事が分かるようになるべく広く浅く書いてみたいと思います。
目次
はじめに
今回シンセサイザーを紹介するにあたって「どんな切り口で紹介してみよう?」と少し考えてました。
色々と考えてみましたが、結局自分の経験から離れた事を書いても取って付けたような感じになってしまいます。紹介するシンセなどに偏りが出てしまいますが、やはり自分が興味を持ったシンセサイザーやアーティストを軸に、アナログシンセ、デジタルシンセなどについて触れてみようと思います。
シンセってどんな機種があってどんな音が出るの? という人に読んで欲しいです。
シンセサイザーの現状
バンドを始めるにあたって各種シンセサイザーの違いが分からないケースは本当に多いです。私もそうでした。この理由については色々ありますが、大きくは一昔に比べて「鍵盤楽器の種類が多くなった」ということが上げられます。
昔から順を追ってシンセサイザーの発売を体験してきた今の50、60歳くらいの世代の方たちに比べると、今の若い世代の方たちは歴史的な面から見ても楽器や機材に対するスタートラインが違います。
機材も本当に色々増えましたし、今からキーボードを始めようとしている人が自分の力だけで欲しい機種を選定するのも少し無理があるのでは? とも思います。
しかしシンセにも歴史というものがある以上、その発展と経緯を知らないままでは本当の意味で今の製品の価値はもとより、昔の製品の凄さも理解しがたいのではないでしょうか?
話をキーボードに戻して、
このように今からキーボードを始める人は種類が多すぎるので選びにくいと思いますが、もちろん大きなメリットもたくさんありますよ。
昔と今のシンセの大まかな比較
シンセを使うにあたって、今では当たり前なこと過ぎて知らず知らずスルーしてしまうようなありがたい技術の進歩が色々ありました。今でもこれらを知っておくと色々と価値観の再認識が出来るのではないでしょうか?
重さ
一昔前の鍵盤楽器全般にいえる事はとにかく「重い」という事です。現在主流のキーボードの材質と見るからに違うのですが、重い分強度の高い素材を使用しています。また、それらが今見ると味になっているとも言えますね。
YAMAHA DX7 (1983年発売)
https://www.matrixsynth.com/2015/04/1980s-yamaha-dx7-digital-fm-vintage.html
それに比べると現在のキーボードはとにかく可搬性が優れています。気軽に持ち出せるということが、どれだけ重要なのかはキーボーディストが一番身を持って知るかと思います。
(画像上の YAMAHA DX7 は、画像下の KORG KROSS の約三倍以上の重量です)
KORG KROSS 61 (2013年発売)
https://en.audiofanzine.com/korg/kross/editorial/reviews/entry-level-redefined.html
加えて安価で多機能、高音質、簡単操作、という恵まれた状態でキーボードを選ぶ事が出来る点は魅力的ですね。
最大同時発音数
それからもう一つ大事なことは「発音数の制限」があったことです。
今からシンセを買う人は、よほど安い「ファミリーキーボード」か「トイキーボード」と呼ばれるおもちゃでない限り、この発音数の問題に悩むことはほぼ無いと言って良いでしょう。
昔のシンセは一度に鳴らせる「発音数」が限られていました。例えば最大同時発音数が「5音」の機種であれば、鍵盤を5本押した状態で6音目の音を弾くと一番初めに弾いた音が消えます。
音色の種類の中でも特にピアノを中心とする鍵盤楽器の音色などは、ペダルを使うと音を伸ばしたまま次の音に繋ごうとするので、すぐ音が鳴らなくなります。
もうひとつは、音を2つ足したものを一音鳴らせば2音鳴らしたと同じことになりますので人によってはフレーズや弾き方の工夫などあったと思います。
今では機種にもよりますが、最大同時発音数は標準で「128音」となっていますので、まず問題ないでしょう。
高音質
今のシンセは即戦力の高音質な音が最初からたくさん入っており魅力ですが、これは特に生楽器系の音色を弾く時に恩恵を受けることが多いかもしれません。一番の理由は音がリアルだからでしょうか。
ただ、もはやこれだけシンセも出てくると操作性はさておき、ある時期までは各メーカーも基本的な音源部分は使い回しが殆どで、音も飽和状態になりつつありました。
そこで最近では、昔のシンセも「味がある」など価値が見直されています。衰退した当時の機材や音色を使ってセンスのある音楽を作っている人も世界中で多く、それらは YOUTUBE などで露になってきました。
その流れで、最近では各メーカーが昔の代表的なシンセを再現した機種の需要を汲み取り、鍵盤楽器という媒体に問わず、アプリ、ソフトウェア音源などでもリリースしていますので、それらに対応したガジェット製品を使いこなすミュージシャンも増えています。
最初は好きなキーボードを選べば良い
と言うわけで、ひとまずは購入前に自分なりに色々調べ「これが欲しい!」と思ったキーボードを選べば良いでしょう。例え後から失敗だったと分かったとしても、自分で選んだ機材は良かれ悪かれ、必ず自分の知識になる、ということです。
後から「これではなく、あちらのシンセを買うべきだった」と分かれば、それだけ自分が知識を得て製品の特徴や性能を理解したと言う事になります。それは損得抜きにして凄い成長だと思いませんか?
というわけで、早速シンセサイザーについてお話したいと思います。
シンセサイザーとは?
本来の意味でのシンセサイザーは【シンセサイズ=合成する】という意味からきていますが、イメージ的には「音を合成するマシン」と思ってもらえれば良いでしょう。
そのマシンにキーボード (鍵盤) が付いているものを【キーボード】または統括して【シンセサイザー】と多くの人は呼んでいます。
つまりこの「シンセサイザーも総括してキーボードと呼ばれてしまっている事」が、キーボードとシンセサイザーの違いが分かりにくい原因となっています。
キーボートとは本来、シンセサイザーで作った音を鳴らす装置でしかありません。シンセが「ゲームソフト」だとしたら、キーボード (鍵盤) はゲームを遊ぶ為の「コントローラ」と考えれば良いでしょう。
例えばこの KORG というメーカーの KRONOS というキーボードはデジタルシンセサイザーの一種ですが、一台で音楽制作を完結してしまう機能を持ち合わせています。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Korg_Kronos_X_88.jpg
KRONOS は鍵盤楽器なのでキーボードの部類に入りますが、シンセサイザーとしての機能も備えています。さらには、音楽制作の機能なども持ち合わせていますので、シンセの部類の中でも「ワークステーションシンセサイザー」というカテゴリーに属しています。
さらには、こういったデジタルシンセサイザーとは別に「アナログシンセサイザー」といったものも存在します。
アナログシンセは、上記の KRONOS のように幅広い音は出せませんが、シンセサイザー特有のインターフェース (つまみ、スイッチ、フェーダーなど) を使って音作りが出来ます。
こちらは Minimoog Voyager というアナログシンセサイザーです、かっこいいでしょ?
MOOG Minimoog Voyager
https://item.rakuten.co.jp/ekiweb/20150502-132-07/
アナログシンセサイザーの最大の特徴は「斬新なデザイン」「目に見えて直接触れる専用のつまみ」「出音の太さ」が上げられます。特に音に関しては「これでしか出ない音」と考えて良いでしょう。
シンセサイザーの種類について
シンセサイザーにはまず大別して「アナログシンセサイザー」と「デジタルシンセサイザー」が存在します。順を追っていけばアナログシンセから始まり、デジタルシンセに発展したと考えてよいでしょう。
アナログシンセサイザー
アナログシンセサイザーは、つまみやノブ、スイッチなどを使い一から自分で直感的に音を作るシンセです。とにかく音が分厚く、視覚的に音作りのプロセスを学べるのでキーボードに興味を持った人は殆どアナログシンセに興味を持ちます。(買うかどうかは別として)
ビンテージアナログシンセの弱点はピッチが不安定で、音を鳴らす場所の室温などの外部の影響を受けます。よって音程が安定しない場合はライブ中でもチューニングが必要になります。調子が悪いとドを弾いてもド#や、B♭が鳴るというようなイメージが分かりやすいでしょうか。
それがデジタル制御であれば、ドが鳴るという事を「数値」でコンピュータが管理しているため、必ずドが鳴るわけです。
こういったデジタルの良いところを使ってアナログシンセの特徴的な音、音色変化を再現し、操作性もアナログシンセのレイアウトをイメージして作られたのが「アナログモデリングシンセ」または「現行型アナログシンセ」と呼ばれるカテゴリーのシンセになります。
先ほど紹介した Minimoog Voyager はアナログシンセサイザーの一種になりますが、現行モデルの機種なので、70年〜80年代前半のビンテージ製品のアナログシンセと比べると少々位置付けが異なります。以下に簡単に補足します。
ビンテージ・アナログシンセ
昔の70〜80年代前半くらいのアナログシンセで、状態の良いものは入手困難で価格も高いです。定期的にメンテナンスも必要になるため維持費も必要。また、経年により部品の在庫が無くなりつつあります。音や存在感は凄いです。マニア向け。
アナログシンセ (現行モデルのアナログシンセ)
ビンテージアナログシンセの価値を見直し、現代版として復刻された機種。同メーカーが復刻した製品であれば、見た目やデザインは当時のレイアウトを参照にしているものが多いです。価格はピンキリで、安いものだと5万円台からのモデルもあります。
単音しか音が出ないモノフォニックと、和音が出せるポリフォニックがあります。
アナログモデリングシンセ (バーチャルアナログシンセ)
ビンテージアナログシンセの質感をデジタルでシミュレートしたアナログモデリングシンセ。今アナログシンセを買うのであればこのカテゴリーの機種がオススメ。
デジタル制御によってビンテージの弱点であった部品の経年劣化や、温度による音程の不安定さなどを払拭しており、基本的にメンテナンスも不要。価格もエントリー向けが多いので、当時の実機にこだわりが無ければ間違いなくオススメしたいですね。
バーチャルアナログソフトウェア音源
また、これらのビンテージアナログシンセを再現 (モデリング) した音源も、DAW制作のソフトウェア音源としてシェアが広がっています。再生環境としてPCや周辺機器は必要になりますが、当時何百万もしたシンセを数万円で操れる為、多くの作曲家やミュージシャンが使用しています。
現行モデルの「アナログシンセ」と「アナログモデリング」にカテゴリー分けについては、楽器店や人によっても扱いが曖昧になっていたりします。基本的にアナログシンセと言ったら、とりあえずは昔のビンテージ製品のアナログシンセと考えてよいと思います。(私はそうしてます)
次回は「デジタルシンセ」に関する基本や特徴などを簡単にお話します。