ゲーム音楽を専門に弾くピアニスト。人は彼を「Video Game Pianist」と呼びます。その名の通り、彼はゲーム音楽に特化した、ゲーム音楽を世に広める為に活動するピアニストです。
そんな彼も今では人気者ですが、無名の頃に彼の姉が勝手に投稿した「あるピアノ演奏の動画」が注目を集めます。彼のキャリアはここから始まりました。
目次
- Super Mario Medley (スーパーマリオ メドレー)
- クラシックで鍛え上げられた演奏秘術
- 数年前に突如インターネットに現れた目隠しマリオピアニスト。
- 見い出された才能
- Final Fantasy Medley (ファイナルファンタジー メドレー)
- ゲームイベント[E3]での下積み時代
- Zelda Medley (ゼルダの伝説 メドレー)
- クラシックピアニストとしての顔
- より一層パフォーマンスに磨きをかける
- 現在の活動状況
Super Mario Medley (スーパーマリオ メドレー)
まずはこちらの動画をご覧下さい。全ての始まりはこの動画です。当時かなり話題になりましたので知っている方も多いかもしれませんが、私自身が彼のファンなので改めて記事を書いてみようと思います。
クラシックで鍛え上げられた演奏秘術
ピアノを全く弾いた事が無い方も、少しかじったことがある方でも、この動画で当時の彼の演奏テクニックがとてつもない才能を秘めていることが分かると思います。クラシックピアノで鍛え上げられた運指方法、一つ一つの指が完全に独立して動いており、メカニカルな演奏テクニックが演奏のパフォーマンスを支えています。
この動画の見所は色々ありますが、特に人気があるのはラストパートの左手のパフォーマンス。スーパーマリオワールドのゲーム中において、タイムオーバー1分を切ると「BGMが早く再生する状態を再現」したパフォーマンスですが、「ただ速く弾く」といった次元の演奏ではありません。
その目的の早さに到達する為に、メトロノームを使いきちんと段階を踏んで徐々にスピードを上げていった「リズムの安定」があり、これがピア二ストとしての彼の技術の高さを裏付けている証拠と言えます。その証拠にこのパートだけをメトロノームと一緒に弾く別の動画も当時はありました。
(この左手のズンチャ、ズンチャという弾き方は、ジャズなどではストライドピアノ、またはハーレムピアノと呼ばれるスタイルになります。スコットジョプリンの「ジ・エンターテイナー」のような、ラグタイムピアノを速くしたイメージが分かり易いかもしれません)
恐らくあまりに早すぎて
「左手とメロディがずれている、音をはずしている」
そういった意見も出ると思いますが、このスピードに置いてそこはあまり問題ではなく、どれだけミスタッチをしても左手のリズムは安定しているところが、安心して聴く事が出来る理由の一つだと思います。
そしてこの早さにおいてのミスタッチは、逆に生演奏による魅力を語る上でもはや「相乗効果」にもなっており、言い換えれば「生々しい」のです。何度もツアーで演奏するようになってからは、このパートのスピードは、もはやコンサートでもネタになっています (笑)
数年前に突如インターネットに現れた目隠しマリオピアニスト。
彼の名前は「Martin Leung (マーティン・ラング)」
Video Game Pianistとも呼ばれている。
本名MARTIN-LEUNG(マーティン・ラング)
中国人と日本人のハーフとして香港で生まれ、3歳の頃にアメリカに移住する。
4歳から姉の影響でピアノをはじめ、早い時期からその才能を発揮。
2004年の夏、彼が高校生の時に撮影した目隠しでマリオを演奏する動画がインターネット上で話題となりゲーム音楽を演奏するVideo Games Liveの社長の目にとまり、スカウトを受けた。
その後Video Games Liveを主なステージとして演奏を続け、現在に至る。
ニコニコ大百科より
Video Game Pianist™ | Professional Pianist and Artist of Life
こちらは彼の公式HP、活動状況や演奏動画、MP3など様々な情報が見れます。
現在は「Video Game Pianist」と名乗っていますが、当初は「Blindfold Pianist」と名乗っていました。
「blindfold (目隠し) 」と言う名の通り、布で目隠しをした状態でスーパーマリオブラザーズの「地上ステージ」を弾いて全世界の注目を集めたのが彼のキャリアのスタートでした。
当時まだ「YOUTUBEが」無かった時代に、ある動画サイトで一部のマニア達によって注目され再生回数を上げていました。当時はまさかここまで有名になるとは思いませんでした。今でも最初に動画を見た時の感動は忘れられません。
見い出された才能
そんなネットの片隅で注目を浴びていた彼の才能をいち早く見抜いたのが
Tommy Tallarico (トミータラリコ) という人物。
トミーは「Video Games Live」という
アメリカのゲーム音楽オーケストラ楽団を率いるプロデューサーです。
こちらはVGLのHP。活動状況や履歴など色々見れます。
また、ゲーム音楽の作曲家でギタリストでもあり、数々の受賞歴を持ちゲーム音楽はもちろん、ゲーム業界においても一石を投じた革命者でもあります。
ギタリストとして自身のオーケストラ楽団と一緒に演奏も披露しています。
マーティンはトミーによりスカウトされ、Video Games Liveで目隠し状態でマリオミュージックを演奏をし、会場のゲームファンを湧かせました。
そしてオーケストラの一員として世界各地を周り、世界中のゲーム音楽ファンにパフォーマンスすることになります。
Video Games Live -Megaman-
このように色々なゲーム音楽のカバーをアレンジして演奏しているのが特徴。ロックマンの人気も非常に高いですが、海外の人気ゲームのレパートリーも多く持ち、日本と海外の両ゲームのレパートリーをバランス良く持っています。
因みにプロデューサーの トミー は1番美味しいパート (ロックマン3のイントロ導入部) を気持ち良さそうに弾いています。
Final Fantasy Medley (ファイナルファンタジー メドレー)
Martin Leung - "Final Fantasy Medley" - Video Games ...
こちらは Video Gmaes Live においての演奏。
彼はスーパーマリオの曲の演奏が最も有名ですが、「ファイナルファンタジーのピアノメドレー」も彼の代表的なレパートリーです。
メドレー曲の一曲一曲のKey(調性)の違和感を無くすために、随所にオリジナルメロディラインによる繋ぎを入れています。そしてメドレーとしてのまとまりが考えられた展開は、単なる曲のメドレーではなく、もはやメドレー全体を通してストーリーになっているのが分かります。
メドレーの流れを完璧に弾き込んでおり、全体を通し「一曲として」披露するような形となっています。
他のゲーム音楽を演奏するピアニストと決定的に違う点は、ゲーム音楽の曲でもクラシックピアニストのような演奏パフォーマンスをするところです。それが華やかでダイナミックに見える要因の一つとなっています。
これらはピアノの演奏技術はもちろん、正しい演奏姿勢、リズム感、身体の柔らかさも必要なってくる上に、曲の展開と共に一体感のある表現が伴わなければ華やかに見えないので、こういった演奏が出来る人は限られてくると思います。
ゲームイベント[E3]での下積み時代
Zelda Medley (ゼルダの伝説 メドレー)
Video Game Pianist - Zelda - YouTube
ご存知「ゼルダの伝説」の演奏。色々な動画がある中で昔から大好きなこちらを選びました。冒頭から顔のアップ、マリオの青いTシャツ、メガネ、唇と、さらにはピアノに背を向けてテーマを弾いているので、冒頭から吹いた方も多い映像 (笑)
完全に曲を弾き熟しており、ダイナミックな演奏やアレンジも、彼の弾き方でより魅力的なものへと昇華しています。ディミニッシュコードの左手のオクターブなど、まさに「歌っている」と思います。
クラシックピアニストとしての顔
Beethoven Piano Sonata in C Major, Op. 2 No. 3
こちらはベートヴェンのピアノソナタ。クラシックを弾かせても一つ一つの音を丁寧に歌い上げるように弾きますね。演奏者は聴く人に曲を通して何を届けるか様々だと思いますが、彼の場合、彼自身も曲と同化しており、それはゲーム音楽の演奏でも顕著です。
前述した話と重なりますが、曲の展開やダイナミクス、弾いている音符によって意図的に表情を変えたり姿勢を変えたりして、見る人聴く人を楽しませようとしています。
唇をあけたままは素だと思いますが (笑)
より一層パフォーマンスに磨きをかける
KORGのP-250という安い電子ピアノで録音してアップしていますが、まさに安い電子ピアノでも弘法筆を選ばず。それよりもどうやったら聴く人を楽しませれるか模索中のようです。ちょっとわざわざ筋肉を見せるところは賛否が分かれるかと思いますが....まぁ鍛えた姿を見てもらいたいのは分かりますけどw
現在の活動状況
現在はYOUTUBEを通して、自身の公式アカウントよりゲーム音楽のピアノ演奏動画を精力的にアップしてます。当時からのレパートリーもあれば、新しいレパートリーもあります。
彼の公式YOUTUBEアカウントはこちら
他にも彼の演奏動画はたくさんありますので、興味が湧いたならば探してみてください。ツアーで周る国によっては、コンサートでグランドピアノが供給出来ないときも珍しくなく、電子ピアノや酷いときは鍵盤の数が61本しかないシンセサイザーで弾いている動画もあります。
この動画がまさにそう。しかも目隠しで相当弾きにくいと思われますが....
しかしさすがマーティン、逆にタッチが軽すぎて残像になっていますが (笑)
まぁ音外しまくってます。ぶっちゃけこのスピードでこの鍵盤なら外しますね...しかし絶対にリズムは安定しており、この生々しさがライブの臨場感を増幅させています。
このようにうまく弾けてない動画もありますし、それも含めて彼の成長を楽しめるかと思います。並行して各地で演奏活動も続けているようで、これからますます私たちを楽しませてくれることでしょう ♪
Video Games LiveのおすすめCD/DVD
↑やはり断然オススメなのがこちら。Video Games Liveのコンサート。マーティンだけでなくオーケストラの演奏は鳥肌もの。特にロックマンメドレーはバンドとギターもMIXされ感動間違い無し。悪魔上ドラキュラもありますよ!上述したプロデューサーのトミータラリコもギターで参加しており、一番おいしいパートを弾いてますw