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ゲーム音楽の巣

フリー音楽素材サイト「音の園」を運営する傍ら、キーボーディスト向け、ゲームミュージックの作曲に特化した専門的な内容を書いています。最近はアンビエント、ヒーリング・ミュージックを追求しています。2月はオーケストラ系の素材曲を作っています。

【作曲】FC風サウンド『magical 8bit Plug』を使ってレトロゲームの曲を作ってみた

PSG音源 アレンジテクニック集 作曲テクニック集 ソフトウェア音源 作曲/編曲

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Photo by YMCK official website

アメリカに住んでる友人が RPGツクールVXace でゲームを作ろうとしているようです。そこでサウンドを作って欲しい、という事で最近はそれ関連の曲作りをしています。

 彼と私は同い年なのですが、それぞれの好きなゲームの共通点としては昔懐かしのファミコンソフト。

ドラクエ、FF、マザー、と大好きなゲームを上げればキリがありませんが、今作っているゲームは、VXace のシステムをベースにレトロ風のデザインで作りたいとのこと。

サウンド周り以外を全て一人で作る事に加えて、メインキャラのドットも自分で打つと言っているので相当時間は掛かりそうです。完成するのか非常に不安 (汗)

まぁ昔からやり遂げる人なのできっと大丈夫! (笑)

というわけで、サウンドも「ファミコン風のサウンド」で作って欲しいという注文を受けましたので、改めてファミコンサウンドについて調べたりしてました。

本記事では、ファミコンサウンドの各音色の特徴を交えながら、作曲したオリジナル曲を例に各音をどのように意識して配置したかなどを書いてみたいと思います。

レトロゲーム風サウンドの制作のヒントになれば幸いです。

目次

まずはファミコン風の音をGETする

ファミコン風に曲を作るには、まずファミコン音源である PSG 音源に近いサウンドを入手する必要があります。

オススメは YMCK さんのプラグイン「magical 8bit plug」というサウンド。

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今回このサウンドを使って曲作りをしていますが、そのまま使うだけでもかなりファミコンらしくなるのがお手軽ですね。

以前興味があった時に少し触っていたのですが、ファミコン曲を本格的に作曲するのは最近になってからなので少しずつ慣らしていきたいですね。

 

magical 8bit Plug はこちらからGET↓

http://ymck.net/download/magical8bitplug/index.html

ファミコンの音色

では早速作曲していきます。

まず音色を選ぶ前に、音色の特徴と主な役割について学びます。

magical 8bit Plug は5つの基本的な音があります。

  1. Square (矩形波) 
  2. Triangle (疑似三角波) 
  3. Noise (ロービットノイズ) 
  4. 25% Pulse (パルス波)
  5. 12.5% Pulse (パルス波) 

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この5つから音色を選択して作曲していきますが、「2」「3」の疑似三角波、ロービットノイズ音はファミコン風の音にする為に特に重要になってくる音になります。

矩形波は、パルス波の Duty 比という数値を変えた音になりますので、音のキャラクターだけ理解したら、好みでどちらをメロディにするか決めればOKです。個人的には2つ重ねてハーモニーにするのがオススメ。

では基本的な5つの音の特徴を紹介します。

なお、理論的なことは Wiki を参照していただき、本記事では音楽的な使い方の視点で書きます。

矩形波

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ピコピコしたサウンドで、ファミコンらしい音ですね。

パルス波の幅を50%にした音が矩形波と呼ばれています。

基本的にメロディで使いますが、アルペジオなどでコード感を出すのも良いです。その場合、何音符で詰め込むかにもよりますが、音の長さと、音の強さ (ベロシティ) が表現のカギになってくると思います。

また、ADSR と呼ばれるエンベロープ (音の立ち上がり、減衰などを調整すること) を調整することにより、息継ぎの楽器の表現も出来ます。

決定音、キャンセル音、カーソル音など、音階を持った効果音 (SE) にもオススメです。

パルス波

ザ・ファミコン音の一つ。パルス波の幅を50%にしたものが矩形波になります。

magical 8bit Plug では、パルス波は25%12.5%が収録されています。

25% (イメージ)

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12.5% (イメージ)

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つまり25%が基準で、それを伸ばす (50%に広げる) ことで矩形波という音を作り出したということですね。幅を狭めると音が細くなります。

個人的にはロングトーン時の内声などで使いたい音ですね。

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(この幅の長さが矩形波であり、これ狭めたものが上記のパルス波になります)

もし迷ったら、この25%と12.5%を常にトラックに用意しておき、MIDI (フレーズ) を作成した後にどちらの音が良いかすり替えて響きを試すのがオススメ。

音が引き締まっているので、ギターのカッティングや、サックスの代わりに使えます。後に紹介するジャズテイストの曲でも、そのように使用しました。

疑似三角波

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通称「ファミコン界の神音」と呼ばれるほど、この音が鳴ってなければファミコンサウンドに聴こえないという。通常の三角波と違って音がノイジーで太いので、ギザギザした波形がイメージに近いかもしれません。

こちらは通常の三角波の波形。

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こちらはギザギザしてないのでファミコンっぽくないのです。

話を戻しまして、

疑似三角波は基本的にベースサウンドで使用することがオススメですが、音域によって表情がガラッと変わるのが特徴。すごいファミコンっぽい音ですね。

ピアノの鍵盤で言うところの、C3〜C5 あたりで使うとベースのリフがメロディや、コードの響きに聴こえるレベルの存在感に。

C2〜C3 あたりで使うと、ベースらしい音になりますが、音が中域に比べて前に出てこなくなるので少し他の音やフレーズとの兼ね合いが重要になります。

C4〜C5 辺りで使うとリコーダーやフルートみたいな感じに。それ以上高くするとピコピコした音にもなります。

疑似三角波は、リズム感を出せる他、中域のフレージング次第ではコード感やメロディも同時に出せる要素を持っているので、恐らくこの音をフル活用することがポイントになってくると思います。

フレージングやリフなどもそれらを狙ったようなものにすると良いですね。

一音も無駄に出来ない、かなり練り込みが重要な音になります。

ホワイトノイズ

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ホワイトノイズは昔の TV などの「ザァー」というような音だったりと色々な場面で聞く機会があると思います。

magical 8bit Plug はこれとは違い、ロービットノイズと呼ばれるものを再現しています。

ロービットノイズ

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ロービットノイズはホワイトノイズよりも波形に荒がありますね。

やはりノイズの使い所としてはやはり効果音が多いと思います。

効果音は、ダメージを与える音、街に入る音、敵と遭遇する時の音、カーソル音、選択音、キャンセル音など本当にたくさんあります。

その中でもノイズが活きるような効果音はダメージ音であったり、ドラムパートのスネアやハイハットのような使い方ですね。

工夫してそのような既存の楽器の表情を出したい時にも有効です。

その他

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この他にもビブラート、周波数スウィープという数値も設定出来ます。

いわゆるこの数値を弄ると、音程を持つ音ならマリオがジャンプする時のような音や、ロックマンでおなじみのドラムのシンセタムのような音が作れます。

ドラムのキックやタムなども、矩形波や疑似三角波などの音を元に SweepSwitch 、ADSR を変更する事で表現出来ますね。

効果音も作りたいと思っていますので、こちらも色々と弄りたいと思います。

ファミコンサウンドのルール

ファミコンの音を使えばとりあえずファミコンっぽくは聴こえますが、よりいっそうファミコンサウンドに近づけるならば、ハードの制約なども重要になっていきます。

ひとまず押さえておきたいことは3点あり、

  • ファミコンは最大同時発音数が「4音」
  • サウンドの基本的な構成は「3和音+ノイズ」( 3和音以上は鳴らせない)
  • 疑似三角波とノイズは1トラックで固定「矩形波 (パルス波) ×2+疑似三角波×1+ノイズ×1

ノイズも含めて4音、という話になってきますので、実はかなりシビアです。

従来のファミコンは、4音を超えると音が勝手に消えるという事実があります。特に効果音でよく使われる「ノイズ」はどうしてもゲームの演出上、いくつも重なる事が多いので仕方がありません。

ですが今のゲームでは4音以上鳴ると音が勝手に消えるという事はありません。

なので「3音+ノイズ」という縛りで作曲しても、当然ですがゲームで使うのか、一つの曲として聴くのかでも取り組む意味が変わってきます。

あくまでこれは、ファミコン「らしく」する為に必要な条件、というくらいの意識で念頭におきましょう。

今回作曲したオリジナル曲は、完全な3和音で作った曲とそうでない曲もありますが、なるべく3和音を意識していきます。

あまりルールに縛られると曲作りが進みませんので、慣れないうちは音数を少なくするくらいの意識で作曲した方が良いかもしれません。

作る前のイメージ

今回作成したのは冒頭でお話した友人のゲームに添える為の曲ですが、まだ殆ど何も出来ていない状態なので、ファミコンっぽい感じ、RPG、と言う2つのキーワードだけを頼りに曲作りを開始。

(本当はまだ物語などの設定はありますが割合します)

ひとまず、共同制作で重要なことは「相手が気に入らなければ本題にはいれない」ということですね。どれだけ自分で良い曲が書けたとしても、使う相手のイメージに粗ぐわなければ曲は一瞬でゴミ箱行きになります。

なので、まずは曲の方向性を確かめるべく、一曲20分くらいでラフ曲をどんどん勢いで作り提出します。

ささっささっと、Drop Box にぽ〜いっと!

そこでまず曲の入りや、コード進行の雰囲気などをチェックしてもらいます。

RPG と言うキーワードがありますので、

  • バトル曲
  • マップ、イベント曲
  • オープニング、タイトル曲
  • 効果音 (SE) 

これらをイメージして30秒くらいのラフを作成します。

バトルなら5曲、タイトル画面に合いそうな曲を3つ作るなど。

最初から真剣に作りすぎないことがポイントです。ボツだったら泣きますので (泣)

相手が

「この曲いいね、これにこう展開する感じで、あとこの部分はいらないかも」

などとラフ曲を気に入ったら、その曲の作り込む前に最低限必要なポイントを教えてもらいます。この段階で聞けることは聞いておきましょう。

そして審査を通過した曲から作り込んでいきます。

結果、現段階のアイデアで通ったのは今回紹介する5曲になります。

作った曲の解説

まだ最終的に変わるかもしれませんが、とりあえず現段階でのデモになります。

短いので曲に興味が無い方でもサラっと聞き流すだけでゲームの雰囲気が伝わるかもしれません。magical 8bit Plug を使用して、上記のルールに沿って作曲すると、こんな感じのサウンドが作れます。

タイトル

文字通り、スタート、コンティニュー画面で流れる曲ですね。

ベタな展開ですが、っぽくはなったと思います。まだ矩形波とパルス波を効果的に使い切れていない感じはしますが、ひとまず最初はこんなものだということで形にすることを優先に。

一番気にしたのはファミコンの響き、でしょうか。音が3つ重なった時の響きがとにかく綺麗に鳴るような音域、メロディを意識しました。

急げ急げ

はい、その名の通り「ここから逃げるぞ!」的な感じでしょうか。

そういう場面は一応あるらしいので作りました。この曲はキレッキレな感じを目指したかったので、疑似三角波、矩形波は音の長さを特に意識。このテンポで16分は正直人間が演奏するものではないと思いますが、そのような感覚で機械的なイメージで。

ノイズはキックとスネアを音程を変える事で表現してみましたが、ファミコンサウンドで言うキック音は、音のニュアンスよりも、配置する場所が重要だと知りました。

ベース、または他パートのフレーズがキックのアクセントを補う要素を持っていれば、キックは不要かと思われます。

やはりキック、スネア云々よりも、リズムの出し方、表現の仕方が大事ですね。

お仕事開始

主人公が人ではなく、かわいい死神とのこと。どうやら人間に何かをすることが、彼らの食欲を満たす為に必要なお仕事になってくるらしいのですが、なら「こりゃ茶目っ気だ」という感じで作曲。

テーマは矩形波ですが、一音では寂しいのでパルス波をハーモニーに添えます。

疑似三角波はウォーキングベースをイメージして、少し頭の拍より後ろに置いてグルーブ感を出します。その代わりノイズはオンの位置で。

矩形波をギターのカッティングにして、後半のアドリブパートをサックスみたいな感じでピッチベンドを駆使して演奏しましたが、シンセのソロっぽくなってしまいました。

バトル#1

いわゆる、ザコ戦の通常バトルの曲のイメージを持って作曲。

5曲提出したバトル曲のうち、ようやく採用。曲前半のメロディ展開が気に入ってくれたみたいです。

こちらからアイデアとして、後半はピンチな雰囲気を出す為に展開させたと伝えたら、大満足の様子。前半のコードの響きで少し揉めましたね。

前半は疑似三角波が中域でコード感も出してくれているので、残りのパルス波と矩形波でメロディとハーモニー、オブリガードを交互に展開。ノイズはスネアの位置へ投入。

バトルは一番聴くことになるので聴き飽きないものを目指したいものですが、いざ作るとなるとなかなか難しいものですね。

月夜の死神

タイトルとこの曲は実は一心同体でしたが、長すぎるとのことで分離しました。

しかしどちらもタイトル画面っぽい、という悩みに発展したそう。ゲームに月明かりの下、という場面があるらしいのでそれ用にループ編集しました。

矩形波とアルペジオと織り交ぜてコード感を出しつつ、疑似三角波をかなり動かしました。パルス波は内声で活躍してもらい、隙間を埋めてもらいます。

やっぱり疑似三角波をメロディにもってくると木管楽器のような素朴な感じが出て良いですね。

ファミコン風サウンド「PSG」とは?

ファミコンの音は一般的には PSG 音源と言われています。

そのサウンドが特徴なのは言うまでもありませんが、使っている音色が限定されているという部分が聴く人の記憶に残りやすいと感じています。

16色の色を使って絵を描くより、鉛筆だけで描いた白黒の絵の方が「とりあえずあの絵は白黒だった」というような印象を強く残せるのだと思います。

同じくこれはグラフィックにもそのまま言えることですね。

andy-hiroyuki.hatenablog.com

下の記事ではアナログシンセの波形音を、ファミコン音楽のコピーバンド NES BAND の紹介と共に紹介しています。

andy-hiroyuki.hatenablog.com

ファミコンの音楽は、内蔵音源である PSG を使用、音楽表現はハードやソフトの性能、制約に沿って作られています。

ファミコンソフトの値段は高くなっていきましたが、メモリーが増えるとゲームに使えるイベント容量が増えるので、グラフィックやサウンドも強化が出来たようです。

容量が増えたことにより内蔵音源の PSG に加えて、DPCM という、今で言うサンプリング音源 (予め外部より録音した音) が使えるようになります。

それらが、PSG 音源である矩形波 (パルス波)、疑似三角波、ノイズなどと絡んで「ファミコン風+α」のオリジナルサウンドになっていくんですね。

拡張音源は DPCM の他、SSG、MMC5、VRC6 など色々あるようです。

こちらにすごく良いまとめサイトがありました。懐かしい。

matome.naver.jp

上記のまとめは 8bit 時代のゲームハードのソフトを紹介した内容ですが、懐かしさとともに各ハードの音源や性能を知りつつ、ゲームの曲自体を同時に楽しめれます。

ファミコン登場から後期に渡って、このように使用できる音源に幅が広がっていきましたが、同じファミコンソフトでも、ゲームによって音楽表現や音色が少し違うのはこの為だったんですね。

それでも、ファミコンらしさを失っていないのは、DPCMのような拡張音源 に加えて PSG 音源が使われているという部分が大きいと思います。

最後に

今回 YMCK さんの素晴らしい音源、magical 8bit Plug を使ったオリジナル曲の紹介とともに、PSG 音源の各音の特徴を簡単に書いてみました。

特に矩形波、パルス波、疑似三角波、ノイズの各音の単体での説明はよくあるのですが、楽曲と共に解説した例があまりないように思いましたので、自分の曲で恐縮ですが作曲視点でポイントを解説してみました。

曲を作る上で意識したのは、なるべくファミコン音楽特有のあの独特な響きを出すという事ですね。そのようにハーモニーを重ねることを意識していくと、結果的にフレーズは導かれるようにまとまってくれます。

先にしっかりとメロディを考えていく場合もありますが、重ねる音次第で響きが変わるので作り甲斐がありますね。

チップチューンの音楽は奥が深く、まだまだ私も分からないことだらけなので研究に勤しんでいきたいと思います。少しずつ使える技を増やしていきたいですね。

ファミコンの音に興味を持って作曲に反映させたい方や、magical 8bit Plug だけを使ってゲーム風のサウンド例を知りたい方へ何か参考になれば幸いです。